尾見怜:五〇九号分室

小説・映画・音楽の感想

超絶美少年性欲爆発物語 イエジー・スコリモフスキ:早春

さいきんブルーレイになってみんな見れるようになった名作映画。 小津のほうじゃないですよ。 俳優の魅力で引っ張っていく映画ってあまり好みではないのだが、このレベルになるともう好き。主役二人が普遍的な美男美女なので今観ても眼福でしかない。正直映…

ゆるゆる常温系ガールズバンド 押しつけがましくないこれがいいんだよ感 Hinds:i don't run

上昇志向なんかダサい、洗練などクソくらえ、アバンギャルドでさえないローファイ。超等身大のスペイン産ガールズバンドHinds。私はこのバンドが人気が出る世界がうれしい。別にメンバーが超美形というわけではないのでルッキズムの文脈からも外れるのがやや…

映像化すると退屈になるミステリをどうやるのか その最適解 市川崑:犬神家の一族

市川版金田一耕助の映画シリーズは、だらだら続くシリーズものが大嫌いときている私が一番好む映画群である。 まず市川崑という監督。この人はふざけているのかと思うほどカット割りのテンポが早い。岡本喜八、庵野秀明、「ファイトクラブ」のD,フィンチャー…

非モテ男子はどこの国でも辛いんだよ  ミシェル・ウエルベック:闘争領域の拡大

フランスの現役作家ナンバーワン、ミシェル・ウエルベックさんの処女作でございます。その名も「闘争領域の拡大」。題名が堅い!読む気が起きない!カッチカチやぞ!とはいえ内容は意外にポップ。モテない成人男性の日常って感じ。章分けが細かくて最後にオ…

超理詰めホラーなのに ちょい笑える アリアスター:ヘレディタリー 継承

アリアスターはん!もしかしてオタクも伊藤計劃チルドレンでっか?真っ黒な作品の後に真っ白な作品作るなんて、まんま虐殺器官とハーモニーですもんなぁ!構造も似てるし!意識してるのバレバレやで!今度伊藤計劃について新世界で串カツやっつけながら語り…

めちゃめちゃ好きなルックです これからのSF映画のお手本になってほしい一本 アレックス・ガーランド:エクス・マキナ

いやーいいよね、この映画。なにがいいってミニマルな雰囲気。お金もかかってないんでしょう?自分はキャストで映画を見ないのでこういう知らない俳優で構成された映画が好き。やっぱりイメージってありますからね。このルックなんつったらいいんだろう。GAF…

「やけくそ」という精神状態のおもしろさ Babyshambles : Down in Albion

「もうどうにでもな~れ♪」というAAをご存じでしょうか。 ↓です。 もうどうにでもな~れ *゚゚・*+。 | ゚*。 。∩∧∧ * + (・ω・`) *+゚ *。ヽ つ*゚* ゙・+。*・゚⊃ +゚ ☆ ∪ 。*゚ ゙・+。*・゚" なんかいいですよね。 わたしはこのAAが大好きです。一種のさわやかさをそこに感じま…

切羽詰まった今こそ必要 享楽と無意味の彼方へ 岡本喜八 筒井康隆:ジャズ大名

酔っぱらいながら見るのが正解の映画。もはややけくその幸福感。脚本としてはオチてないけどこれも映画なのだ。話にオチがないのを嫌がる人には無理かも。むしろそういう人が見てこういうのもありか、なんて思うのも吉。 興行的という点ではアカデミー賞なん…

CGなんか要らないよ シュールな笑いとキレキレの演出 SF映画はここまで来た ヨルゴス・ランティスモス:ロブスター

クオリティ抜群のSFコメディ。 画面レイアウトに関してはヴィルヌーヴと双璧でいい監督。 個人的にはキューブリックの後継者はヴィルヌーヴではなくこの人です。決定的なのは音楽のセンスの有無。(ヴィルヌーヴははやくジマーから離れろ) 映画でいう笑いの…

世界一のベストセラー作家が別名で書いた最高傑作 アガサ・クリスティ:春にして君を離れ

美しいタイトルですよね。シェイクスピアの引用だってさ。聖書の次に読まれているのがシェイクスピアで、次がアガサクリスティらしいですよ。ほんまかいな。でも2位と3位のコラボって。悟空とピッコロが組むラディッツ戦みたいな感じで素敵。 ですが内容は全…

傍目からは感じ取れない現代人の異常が書かれている 遠野遥:破局

芥川賞という賞がどのような賞なのかいまいちわかっていないし、純文学とは何ぞや、なんて考えたくも訊かれたくもないのだが、この賞は僕に定期的にいい作家を紹介してくれるのでまあまあ信頼している。(近年では西村賢太、村田沙耶香、上田岳弘) 打率は1…

虚無な音楽の気持ちよさ 力が抜けていくよぉ  ゆらゆら帝国:空洞です

バンドゆらゆら帝国の完成であり大傑作。 ゆらゆら帝国はこのアルバムを最後に解散しました。 なぜ解散したのかというと、「バンドが完全に出来上がってしまった」から。 坂本慎太郎って本当にかっこいいアーティストですね。 この人ばっかりは天才ですよ。 …

なにからなにまでイビツすぎ! バランスを放棄した邦画らしからぬパンク時代劇 石井岳龍:パンク侍、切られて候

クオリティーの話をすると、各要素めちゃくちゃなので評価不可能というのが正しい。 少なくとも評価が高くなろうはずがない。一部の好きものしか気に入らない映画です。 ただただ素晴らしい。この映画の存在そのものがうれしい。 これを作った人が日本にいる…

ミニマルな日本語と構造が気持ちいい この後を知りたいけどそれは野暮ってものです 永井龍男:「青梅雨」

打ち切りマンガよろしく、「えっ、ここで終わるの!?」という気持ちになる小説は結構ある。 エンタメだと怒られるので、純文学のほうに。 この脱力感というか、置いてけぼりにされたような感覚。 好きなんです。 エンタメの基本なんか無視でいいので、そん…

狂気の極北アニメ 水島努・おかゆまさき:撲殺天使ドクロちゃん

ぼくこのアニメ一生みていられる!鹿目まどかの亜種に殺されるのを楽しむためのイカチイアニメーションです。まったく頭を使わないタイプの作品なのでさらっとdアニメストアで観れるから観てみよう。10分で作ったような電波ソングの魅力もさることながら、本…

お金の匂いのしない音楽ってステキ big thief:U.F.O.F.

とにかくアルバム表題曲に一目ぼれして買いました。リピートで聴き続けてますよ!私はこのサブスク全盛の時代にCDを買う。CDの生産止まるまで買う。マンガはkindleなんだけどね。CDってガジェット自体が好きなんだろうね。レコードみたいに高くなっていいか…

無関心と労働者階級とカトリック 軽いB級映画に重いテーマをぶち込みまくった快作 トロイ・ダフィー:処刑人

自分が腐女子だったとしたら。この映画でアンソロとか二次小説とか作りまくってたんじゃないかしら。なんせイケメン双子兄弟モノである。なにせキャラが濃い。これマンガだよ。大衆向け娯楽である。ハッピーエンドで終わればいいじゃん。なのになぜ最後こう…

ポップカルチャーが通奏低音である世代が作り出した ぼくたちのバンド革命 相対性理論:シフォン主義

物心ついた時、夕方にはアニメが当たり前に放送していて、時々ジブリやディズニーなんか観つつ、任天堂のゲームに時間の大半を費やしていた。ジャンプではワンピースとハンターハンターがしのぎを削り、とても勉強などしていられる場合じゃなかった。ゆとり…

これ以上ないほどにエログロ! タイトルは声に出したくなるよね 野坂昭如:骨餓身峠死人葛

ほねがみとうげほとけかづら。ほねがみとうげほとけかづら。 骨餓身峠死人葛ですよ。 骨餓身峠死人葛ですよ! 日本一かっこいいタイトルの小説なんじゃないすかね。どれだけおぞましいものが書けるかという実験なんじゃないだろうか。すごいよ。差別アリ、暴…

本邦最強変態バンドの集大成 NUMBER GIRL:NUM-HEAVYMETALLIC

2019年に再結成!ほんとうれしいうれしいうれしいうれしいよー 今ライブ観に行けないけど…わたくしが一番好きなバンドの一番好きなアルバム。たぶん一生変わらないでしょう。オールタイムベスト。本邦が誇る最強オルタナティブ・ロックアルバム。唯一無二。…

リアリズム+そこはかとないエロが超盛り盛りで大満足。内容は貧困なのに高級感あふれる工芸品のような映画 是枝裕和:万引き家族

この映画すげえわ。そらパルムドールとるわ……みんながみんな上手すぎるよ。ちゃんと邦画も進化しているのねん。リアリズムってやっぱ振り切った方がいいんだね。万引きってワードはいわゆるツカミですね。ファーストシーンとしては完璧ですが万引きはこの映…

勇気出してこの作品がもつ「雰囲気」について信者が語ろう 押井守:「スカイ・クロラ」

わたしはこの映画の雰囲気が大好きである。超好き。好き好き大好き。 映画における「雰囲気」。いい加減なことばだけどそれが正しい。ネットに永遠に残るから宇多丸の批評能力の限界を示し続ける映画。宇多丸とは結構波長が合うんだけど。この映画ではまった…

快楽から不快へ真っ逆さま いつにもまして画面が真っ赤なドラッグムービー ギャスパー・ノエ:「クライマックス」

高校生の時「カノン」を観てからずーっと好きだった監督ギャスパーノエ。あらゆるモラルに喧嘩を売る監督ギャスパーノエ。どす黒い赤が何とも不穏なギャスパーノエ。DVD買っても観る気分になかなかなれないギャスパーノエ。(「アレックス」とか買ってもいつ…

一度でいいからみてみたい タンカー千切りするところ 劉慈欣:三体

流行りの中華産SF小説。 想像の遥か外。 アイディアの坩堝。 わたしこそちっぽけな虫けら。 歴史も科学もエンタメ要素もごちゃまぜ。これぞオールドスクールなSF。 やっぱSFは短編より長編が好きなんだよなー。えてして短編というのは言葉を切り詰めた切れ味…

一分のスキも無い超上質映画 PTAは天才だ ポール・トーマス・アンダーソン:ファントム・スレッド

私は恋愛映画が苦手だと自認してますが、よく考えたら、オールタイムベストのファイトクラブも羊たちの沈黙も風立ちぬもイノセンスもみんなサブプロットが恋愛映画だな、と最近気がつきました。この映画は恋愛がメインプロットですが本当に素晴らしいよ。万…

安藤サクラすげぇなぁ 前半は完璧な映画 後半はスポ根で二度おいしいけど音楽が邪魔してる 武 正晴:百円の恋

太ったブスからシュッとしたボクサーへと変わる様が本編の白眉。人間の変化をセリフで説明せずに体型や表情で表現するってのはまさに役者の仕事でしょう。尊敬します。この人は底辺っぽい女性の演技がほんとうにうまいわー。っていうかなんでもうまいのか。…

いかにしてキッチュでダサいおじさん的なものから身をかわすか 長久允:ウィーアーリトルゾンビーズ

一つの作品としても、そしてこれからの邦画への影響力を考慮しても、めちゃめちゃいい映画だったと思います。個人的にはシン・ゴジラ以来の大ヒットやで!「カメラを止めるな!」が一の矢だとしたらこの「ウィーアーリトルゾンビーズ」が二の矢かもしれませ…

リンチ作品にしかないものが確実にあるんだけど、それが何かはわからないの デヴィッド・リンチ:ブルーベルベット

若い男の子が息子と夫を人質に取られているメンヘラエロおばさんとエロいことになってしまい、最終的に事件を解決する話です。リンチの中ではかなり観やすい部類の作品だとおもう。ストーリーを普通に追っていけばわかる造りになってます。時系列シャッフル…

ダメ人間の見本市 筒井康隆:家族八景

突然ですが、わたしはダメな人間を見たり聞いたりすることが好きです。 ダメ人間のことを考えるだけでわくわくします。自分がダメなのでダメな人がいると共感します。わたしのダメな人間のなかで好みのタイプは、自分同じタイプである怠惰で人間ぎらいな性悪…

ミニマルなのはいいことだ もっと日本に来てください The XX:xx

ポスト・ポップ、インディー・ポップ、ポスト・ロック、どれが正しいのかわからないけど、The XXは本当にいいバンドです。音楽のジャンル分けってようわからん。 雑誌の編集者が勝手に決めている気がしてならない。 編成が独特で、ツインボーカルの男女がそ…