尾見怜:五〇九号分室

小説・映画・音楽の感想

2019-02-01から1ヶ月間の記事一覧

静のドンパチ映画、主役はもちろん映像、時々デルトロの顔  ドゥニ・ヴィルヌーヴ:ボーダーライン(原題SICARIO)

邦題ダサくするの勘弁してくれ…… この映画はとにかく映像がきれいです。ドゥニ・ヴィルヌーヴは空軍基地をきれいに撮る名人ですね。というか、空軍基地というものがそもそも美しいのかもしれません。抜け感が半端ないので気持ちがいい。 庵野だったりガイリ…

倦怠と退廃の匂いが無いリゾートなんてナンセンス METRONOMY:The English Riviera

METRONOMYだったらこれでしょう。前作の「Nights Out」も悪くはないけども。近似アーティストとしてゆらゆら帝国か。 とにかくアンニュイなアルバムですが、リズムはばっちりのれます。それもドラムとベースが安定している為。スカスカでもいい、気持ちが良…

黒潰れ、群像劇構造、良翻訳、音楽、すべてのピースがはまった大傑作  ガイ・リッチー:ロックストック&トゥースモーキングバレルズ

映画における画面の黒潰れを愛している。常に画面の20%くらいはつぶれていてほしい。そんな黒潰れフェチの変態御用達なのが、フィルム・ノワールの映画群、リドスコ、フィンチャー、そして本作です。単に明るいのがきらい。黒目の色がうすい、とか日光が苦手…

情報量の暴力 大混乱を楽しめる素質を磨け  トマス・ピンチョン:競売ナンバー49の叫び

ピンチョンはね……文学をかじろうとする人間にとっては憧れなんですわ。二十歳なりたてなのに度数高い酒を飲んでみるとか、アマチュア登山家のくせにスポンサー集めてエベレスト挑んじゃうとか。結果は無残です。難解すぎて読めるわけない。似たような作家に…

世界の全体最適の加速と個人 あと唐突な暴言がおもしろかった  上田岳弘:ニムロッド

平成30年下半期芥川賞受賞作品。書店で衝動買いして二日で読みました。いやーよかったですね!最初は上田さんどうしちゃったんだ?っておもっちゃったけどね!芥川賞は純文学の新人賞なのでSF作家はなかなかとれません。近年では円城塔ぐらいかな?好みに合…

愛すべきケレン味、必殺技を叫ぶという事  庵野秀明:トップをねらえ!

おっかない敵があらわれまして、人間が何かしらこまって、誰かしらが、倒す。 というプロットで共有しているのに、アメコミ映画に無くて日本のアニメや特撮だけにあるものはなんでしょ。 それは必殺技の叫びです。 ほんとうに大事なことです。 スパロボをや…

日本的婉曲表現の行方とヒロインと  植松伸夫:Eyes on me(ファイナルファンタジーⅧ)

FINAL FANTASY VIII Original Soundtrack アーティスト: 植松伸夫 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス 発売日: 2014/02/26 メディア: MP3 ダウンロード この商品を含むブログを見る FF8はゲームの文脈で語るとかなり厳しい。ジャンクションとドローだ…

無視されがちな恋愛要素にこそ司馬イズムの真骨頂 司馬遼太郎:燃えよ剣

燃えよ剣(上) (新潮文庫) 作者: 司馬遼太郎 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1972/06/01 メディア: 文庫 購入: 32人 クリック: 409回 この商品を含むブログ (293件) を見る 永遠に消えない新選組ブームの種火であり、沖田総司を天才美青年剣士にしてしま…