尾見怜:五〇九号分室

小説・映画・音楽の感想

ギャグもキレてるが「カッコいい」がつまったSF時代劇 本郷みつる:映画クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望

SFとのファーストコンタクトは、映画クレヨンしんちゃんだった。

BTTFでもスターウォーズでもなくターミネーターでもない。
なんならスターウォーズもしんちゃんのパロディである通常放送のスペシャル回、クレヨンウォーズ(ライトセーバー股間に挟んでたたかうやつ)から入った。
幸せなやつだと思う。私はSFに王道の小説からではなくギャグアニメから入った。(次いで大長編ドラえもん)私の好きなエンタメジャンルはアクションとギャグとSFで、これが一生を決めてしまったかもしれない。
最近見直して本作の構成の完成度にビビった。後半のカタルシスもそうだが、序盤~中盤のテンポとか情報量のコントロールが完璧すぎる。(キャラの説明をしなくていいシリーズものっていうのもあるけど)

この映画は戦国自衛隊にならぶ戦国SFの佳作。そもそも戦国SFじたい絶対数が少ないけどね。

雪丸の城攻め前気合を入れるために叫んだ「八幡!」というセリフだったり、指輪物語の姫騎士エオウィンも言う「私は女ではない!」だったりセリフ回しの細部が秀逸。

みんな大好き大人しんちゃんは正直ハンターハンターのゴンさんの元ネタになってる気がする。筋肉の付き方が大人というか高校生って感じ。かっこいい。
デフォルメされたキャラクターがリアル等身になって強くなるみたいな。顔はケムール人。
成長しないキャラクターであり、園児という記号を持つしんのすけが永遠にもちえない身体的快楽急に付与されてもやもやする。
声はしんのすけのままで、めちゃめちゃカッコいい殺陣の連発。 しんのすけのアクション史上一番カッコいい、多分。
雪丸の線の細い華麗な殺陣から、男気溢れる筋肉感溢れる攻撃へのギャップ。"
セフィロスの正宗以上に長い第七沈々丸もかっこいい。

"今度は五歳の少年の想像力が作り出したカンタムロボ。子供の夢である巨大ロボットの操縦まで夢をかなえてくれる。これもいわゆる「めっちゃでかくなりたい」という身体の延長願望である。
ちなみに東京のど真ん中、堀に囲まれているので皇居である。いけすかないアート系インテリフレンチ、ヒエール・ジョコマンは天皇を廃位させて大統領の座についているのだ。
それをあくまで異常なほどのアクションの重量感。雲黒城ロボのパンチの重そうなこと。ガンダムのスピーディな殺陣では無い。超スローなパワーでの殴り合いである。
これから巨大質量にぶん殴られるという時にコクピットから見る景色の迫力。ロボットものには詳しくないが、これやった人他に居るのか?

"吹雪丸がやや湿っぽい母殺し(似せたロボットだけど)をした後、現実パートで子供の想像力+家族愛でのカラッとしたロボットバトル大勝利は本当にきもちがいい。
BGMの「雲黒城ロボ対カンタムロボ」は本当に燃える。"

"決め技のアクションビームガンはグレンラガンのキメ技並みに気持ちいいです。全身全霊の力をぶち込んだビームというのをそのまんま画でやる。
野原一家は半分おふざけながらも家族愛を叫びつつ必殺コマンドを入力。このガンダムをはじめとしたロボモノにありがちなシリアス展開との距離感がまたいい。"

映画版しんちゃんは巨大建造物のデザインが秀逸。雲黒城、ヘンダ―ランド、大人帝国。SF映画はやはり印象的な都市のルックや巨大建造物がないとだめなのか?
「日本大統領」ヒエールジョコマンはマジで怖い。国会議事堂を変形させて巨大ロボにするというのはまさに天下を賭けた戦いにふさわしい。
下記ブログではマティスジャコメッティという説が語られているが、たしかにいわれてみるとジャコメッティの彫刻そっくりの体型。

各要素についてはたくさん語れるのだがとりとめがなさすぎるな。しんちゃんに対しては漫画アニメ含めて思うところがたくさんあるのだが、ストレートな下ネタが好きな私は漫画も映画も初期が好き。
ひまわりが産まれるまでがピークだったのかねぇ。