尾見怜:五〇九号分室

小説・映画・音楽の感想

シスターフッド邦画の決定版 コミュニケーションの希望に満ちた橋のシーンは映画史に残る 岨手由貴子:あのこは貴族

山内マリコ原作の同名小説の映画化。劇場であまりの脚本の省略の上手さに惚れ、Blu-rayすぐ予約しました。邦画のクソ高いBlu-rayの新作を予約してしまうなんて、大貧民だと自認していた私も貴族の仲間入りなのである。貴族だからブックオフには売らない。た…

名作文学をコメディとして読む勇気と松本人志との接続について フランツ・カフカ:変身

チェコの天才作家フランツ・カフカで一番有名な作品「変身」。私もカフカで一番好きな作品です。調子乗って初めて読んだのは中学生のころ。 新潮文庫夏の100冊には感謝してもしつくせない。 ほんとにあのころ読んどいてよかった。その時はカフカ「変身」カミ…

個人的好みの集合体 ただ面白くはない ドゥニ・ヴィルヌーヴ:ブレードランナー2049

ヴィルヌーヴのベストだと思うし、個人的にもベストに近い作品だと思うのだが、別に面白くはない。カタルシスが無い(この指摘するやつ最悪だけど)って言われちゃうと、まあ~そうだね、としか言いようがない。じゃあなんで今日私はブレードランナー204…

超絶美少年性欲爆発物語 イエジー・スコリモフスキ:早春

さいきんブルーレイになってみんな見れるようになった名作映画。 小津のほうじゃないですよ。 俳優の魅力で引っ張っていく映画ってあまり好みではないのだが、このレベルになるともう好き。主役二人が普遍的な美男美女なので今観ても眼福でしかない。正直映…

ゆるゆる常温系ガールズバンド 押しつけがましくないこれがいいんだよ感 Hinds:i don't run

上昇志向なんかダサい、洗練などクソくらえ、アバンギャルドでさえないローファイ。超等身大のスペイン産ガールズバンドHinds。私はこのバンドが人気が出る世界がうれしい。別にメンバーが超美形というわけではないのでルッキズムの文脈からも外れるのがやや…

映像化すると退屈になるミステリをどうやるのか その最適解 市川崑:犬神家の一族

市川版金田一耕助の映画シリーズは、だらだら続くシリーズものが大嫌いときている私が一番好む映画群である。 まず市川崑という監督。この人はふざけているのかと思うほどカット割りのテンポが早い。岡本喜八、庵野秀明、「ファイトクラブ」のD,フィンチャー…

非モテ男子はどこの国でも辛いんだよ  ミシェル・ウエルベック:闘争領域の拡大

フランスの現役作家ナンバーワン、ミシェル・ウエルベックさんの処女作でございます。その名も「闘争領域の拡大」。題名が堅い!読む気が起きない!カッチカチやぞ!とはいえ内容は意外にポップ。モテない成人男性の日常って感じ。章分けが細かくて最後にオ…

超理詰めホラーなのに ちょい笑える アリアスター:ヘレディタリー 継承

アリアスターはん!もしかしてオタクも伊藤計劃チルドレンでっか?真っ黒な作品の後に真っ白な作品作るなんて、まんま虐殺器官とハーモニーですもんなぁ!構造も似てるし!意識してるのバレバレやで!今度伊藤計劃について新世界で串カツやっつけながら語り…

めちゃめちゃ好きなルックです これからのSF映画のお手本になってほしい一本 アレックス・ガーランド:エクス・マキナ

いやーいいよね、この映画。なにがいいってミニマルな雰囲気。お金もかかってないんでしょう?自分はキャストで映画を見ないのでこういう知らない俳優で構成された映画が好き。やっぱりイメージってありますからね。このルックなんつったらいいんだろう。GAF…

「やけくそ」という精神状態のおもしろさ Babyshambles : Down in Albion

「もうどうにでもな~れ♪」というAAをご存じでしょうか。 ↓です。 もうどうにでもな~れ *゚゚・*+。 | ゚*。 。∩∧∧ * + (・ω・`) *+゚ *。ヽ つ*゚* ゙・+。*・゚⊃ +゚ ☆ ∪ 。*゚ ゙・+。*・゚" なんかいいですよね。 わたしはこのAAが大好きです。一種のさわやかさをそこに感じま…

切羽詰まった今こそ必要 享楽と無意味の彼方へ 岡本喜八 筒井康隆:ジャズ大名

酔っぱらいながら見るのが正解の映画。もはややけくその幸福感。脚本としてはオチてないけどこれも映画なのだ。話にオチがないのを嫌がる人には無理かも。むしろそういう人が見てこういうのもありか、なんて思うのも吉。 興行的という点ではアカデミー賞なん…

CGなんか要らないよ シュールな笑いとキレキレの演出 SF映画はここまで来た ヨルゴス・ランティスモス:ロブスター

クオリティ抜群のSFコメディ。 画面レイアウトに関してはヴィルヌーヴと双璧でいい監督。 個人的にはキューブリックの後継者はヴィルヌーヴではなくこの人です。決定的なのは音楽のセンスの有無。(ヴィルヌーヴははやくジマーから離れろ) 映画でいう笑いの…

世界一のベストセラー作家が別名で書いた最高傑作 アガサ・クリスティ:春にして君を離れ

美しいタイトルですよね。シェイクスピアの引用だってさ。聖書の次に読まれているのがシェイクスピアで、次がアガサクリスティらしいですよ。ほんまかいな。でも2位と3位のコラボって。悟空とピッコロが組むラディッツ戦みたいな感じで素敵。 ですが内容は全…

傍目からは感じ取れない現代人の異常が書かれている 遠野遥:破局

芥川賞という賞がどのような賞なのかいまいちわかっていないし、純文学とは何ぞや、なんて考えたくも訊かれたくもないのだが、この賞は僕に定期的にいい作家を紹介してくれるのでまあまあ信頼している。(近年では西村賢太、村田沙耶香、上田岳弘) 打率は1…

虚無な音楽の気持ちよさ 力が抜けていくよぉ  ゆらゆら帝国:空洞です

バンドゆらゆら帝国の完成であり大傑作。 ゆらゆら帝国はこのアルバムを最後に解散しました。 なぜ解散したのかというと、「バンドが完全に出来上がってしまった」から。 坂本慎太郎って本当にかっこいいアーティストですね。 この人ばっかりは天才ですよ。 …