尾見怜:五〇九号分室

小説・映画・音楽の感想

無関心と労働者階級とカトリック 軽いB級映画に重いテーマをぶち込みまくった快作 トロイ・ダフィー:処刑人

自分が腐女子だったとしたら。
この映画でアンソロとか二次小説とか作りまくってたんじゃないかしら。なんせイケメン双子兄弟モノである。
なにせキャラが濃い。これマンガだよ。大衆向け娯楽である。ハッピーエンドで終わればいいじゃん。
なのになぜ最後こうなった。

ボストンに住む労働者階級の信仰心の強いやんちゃ兄弟の話です。
お兄ちゃん。ワイルドイケメン。相対的に賢く見えるがバカである。必殺技は便器落とし。映画好き。
おとうと。やんちゃイケメン。兄よりもバカである。コミュ強。分断されたアメリカで荷物運んでいそうな顔つき。
ヒロインの立ち位置にはイタリア伊達男系の外見のロッココメディリリーフも務める。作中一のバカである。
ヒロイン枠はもう一人いる。
FBIの凄腕捜査官でヴィランとしての立ち位置のウィレムデフォー。
男ばっかやんけ!
クラシック聴きながら操作するところとスーツの色はまんま「レオン」のスタンスフィールドなプッツンキャラなのだが、
さらにゲイで女装癖持ちという属性が加わって作中で一番濃くて楽しい男になる。この映画の中で俳優の格としては一番上なので、やりたい放題やらせてもらったのかな。
Fワード言いまくりのアイリッシュパブの店主も楽しい。
どちらかというとプーチンに顔が似ててややこしいイタリアンマフィアのボスも表情豊かでたのしい。
脇役もことごとく魅力的なのである。

そんなキャラが濃くて見やすい本作であるが、いかんせんテーマも特濃。
映画におけるラーメン二郎である。まさにB級。バランス感覚という発想そのものが無い。
もしかしたら、名作なのにあんまり有名じゃない理由はこの点にあるのかもしれないな。

そして衝撃のラストからのエンドロール。
あれだけふざけたのに、あれだけ魅力的なキャラを配置したのに、最後ドキュメンタリーみたいになってるwww 
えいやでやってしまったのかな。
メジャー作品ではありえない。これは素人監督じゃないと撮れない。
アメリカ文化はあまり好きではないが、こういう裾野の広さは好きである。
最後のエンドロールで、罪と罰という人類永遠のテーマについて強制的に考えさせられることになる。思いっきりエンタメ作品なのに。結果気持ちよく終われないのである。

「処刑人」というおどろおどろしい邦題のせいか、腐女子にはあまり見つかっていないが、少数の玄人は知っている。さすが。↓
https://womanlife.co.jp/topics/1098166

ちなみに大学時代この映画の影響でTシャツに直で黒のピーコート着てました。恥ずかしい。

 

処刑人 [Blu-ray]

処刑人 [Blu-ray]

  • 発売日: 2010/12/22
  • メディア: Blu-ray
 

 

ポップカルチャーが通奏低音である世代が作り出した ぼくたちのバンド革命 相対性理論:シフォン主義

物心ついた時、夕方にはアニメが当たり前に放送していて、時々ジブリやディズニーなんか観つつ、任天堂のゲームに時間の大半を費やしていた。
ジャンプではワンピースとハンターハンターがしのぎを削り、とても勉強などしていられる場合じゃなかった。
ゆとり教育に甘やかされつつ、大人たちの古い価値観を華麗にかわしながら、退廃的で快楽主義で、それでいてハイレベルな娯楽を浴びてきた。
そんな子供時代を送ると、こういう音楽が響いたりするのだ。
2006年結成のバンド、「相対性理論」は90年代の申し子である。(なんかライナーノーツみたいで恥ずかしくなってきた)

このアルバムは彼らのファーストミニアルバムで、タワレコのインディーズチャートで1位を獲得したらしいですね。
自主製作らしい。一発目でこのクオリティですか。
邦楽ロックのなかで、エリート中のエリートであるといえる。高校野球で言えば藤浪とか。
そんなにがすごかったのか。
まずベースでありリーダーでありメインの作詞作曲者である真部脩一。
ゼロ年代風のサブカル+ネット+ゆとり文化を意識しダジャレを駆使した歌詞。バンド名からわかる通り理系丸出し。
ほんでボーカルのやくしまるえつこの存在。
現在はウィスパーボイスを前面に押し出して萌え萌えなボイスでおじさんたちを挑発する楽曲が多くなったが、
このアルバムではなにしても無感動なガキみたいに世間を突っぱねたような歌声である。何にも感情がのっていない。
私にとっては、相対性理論というバンドは真部脩一の曲+やくしまるえつこの声。それに尽きる。
最大の特徴がここ。
自分たちの一つ上の世代が敬愛する尾崎豊長渕剛、あるいはメタルバンドなどが、異文化としてしか感じられない私。(満33歳の1987年生まれ)
このバンドはえげつないくらい響いた。我々の世代の音楽はこれである。
TSUTAYAで借りてきた大学生の私は#1「スマトラ警備隊」のイントロのギターで「あ、これはいいな」と直観的におもった。多分一生忘れない経験なのであります。
同じ価値観の人間を見つけた感じがした。
#2「LOVEずっきゅん」のアウトロのベースは一度弾いてみたい。たのしそう。


相対性理論『LOVEずっきゅん』


日常系アニメを文字通り日常的に見て慣れてしまった我々にとってはこの声と詞はポカリスエットのごとく浸透する。
真部さんが抜ける前の相対性理論はいいよ。おすすめ。

話はかわりますが、当たり前だけども現代文化のポピュラリティというのはネット登場からものすごいスピードで質と量が変化するようになった。
現代のポピュラリティに私はジェネレーションギャップを感じている。
今のメインストリームは多分Youtuberだ。他にはなろう系ライトノベルスマホゲーなどなど。質の高低を別にして多様化し、量も爆発的に増えた。
私はその変化に置いて行かれたと自認している。
ポピュラリティから置いてかれてるおじさんだ。
ダサい。そんなのやだ。たのしくない。
ではポピュラリティに対するカウンターとしてタコツボにひきこもった冷笑系オタクか、批判ばっかりの偽エリート左翼になるのか。
でもそれもイヤだ。死ぬほどダサい。
結果、自分のスキだった90年代末~2010年代初めくらいの文化をループして摂取しつつ自慰するしかないのだ。老害に見えないよう細心の注意をはらいつつ。
悲しい。でも私にはそれしかない。

でもあたらしいコンテンツの魅力が分からなくなっても、くらいついていきたい気持ちもあるんだよなぁ。

 

 

シフォン主義

シフォン主義

  • アーティスト:相対性理論
  • 発売日: 2008/05/08
  • メディア: CD
 

 

これ以上ないほどにエログロ! タイトルは声に出したくなるよね 野坂昭如:骨餓身峠死人葛

ほねがみとうげほとけかずら。
ほねがみとうげほとけかずら。

骨餓身峠死人葛ですよ。

 

 


骨餓身峠死人葛ですよ!


日本一かっこいいタイトルの小説なんじゃないすかね。
どれだけおぞましいものが書けるかという実験なんじゃないだろうか。すごいよ。
差別アリ、暴力アリ、性描写アリ、これぞエンタメなんじゃないですかね。
この小説は野坂昭如の中編です。
文体はいわゆる野坂文体で、映像的な描写が句点だらけ、読点ぜんぜん無しでやってくるので、いつも読んでいる文の倍以上長い間読み続けるようになり、
なんだか精神的に息が続かないというか、その文体が舞台である戦中の炭鉱を表しているともおもわれ、文中で平気で主語も変わるし、基本酷い事しか起きないので、なんだか読んでいて逆にハイになってくるという代物。(一応まねしてみた)
食料が枯渇つつある九州北部松浦郡あたりの炭鉱という、おどろおどろしい場所のセレクトがまたいいっす。骨我身なんて地名あるんすかね。
表題は、炭鉱で死んだ者の墓から生えてくる白く美しい葛の花。その名も死人葛。こわい。
その葛の実が栄養たっぷりで、戦後の食糧難におけるソリューションと化す。
でも単純にやったー、というわけにはいかない。
この葛、死人を埋めた土からじゃないと生えない、っていうのが悩みなんすよ。
さてどうするってんで、赤んぼ作って殺せばいいじゃん。それ死人じゃん。死人葛生えるじゃん。いいじゃん。という発想になり、
そっからは大乱交&出産&赤ちゃん殺しまくり。徐々に狂っていく人間たちをそれはそれは丹念かつハイスピードで語る。
なんてこと考えるんだ。野坂さん。
主人公は「たかを」というかわいい女の子です。「たかお」じゃなくて「たかを」ね。
この子がさいしょに死人葛に魅入られて狂気を帯び、最終的に炭鉱の人間全員おかしくなっちゃう。
文体はいわゆる野坂昭如の真骨頂。句点でお構いなしに文をつなぎ続けて、疲れたら読点つけるみたいな、黙読してても息切れしてしまいそう。
ずっと「。」がこないから、なんだかそこまでたどりつけないような息苦しさがある。(なんなら読点が無いページもある)
村上龍なんか影響受けてんじゃあないですかね。
てにをはを省くので、なんだかリズムが講談師みたい。それが心地よく癖になる。
この文体はおどろおどろしいところに良く似合う。後半なんか1ページにひとつしか読点がない。
うわーーーーっとえぐい情景描写がダイジェストのごとく次々と襲い来るもんだから、興奮しちゃうよ。
おそるべきドライブ感。
いやーとがった文体ってほんとにいいですね。普通の文が味気なく感じるよ。辛いもの好きみたいで麻痺して際限ないよね。
ラストは犯しまくり殺しまくりで、さらに炭鉱が水に沈みなにもかも終わり。
流される死んだ主人公であるたかをの股には卒塔婆がぶっ刺さっているという狂気のビジュアル。これで終わり。こっわ。最高かよ。
なんだこれ!映像化してぇー!!してよー!

 

 

 

本邦最強変態バンドの集大成 NUMBER GIRL:NUMーHEAVYMETALLIC

 

2019年に再結成!ほんとうれしいうれしいうれしいうれしいよー 今ライブ観に行けないけど…
わたくしが一番好きなバンドの一番好きなアルバム。たぶん一生変わらないでしょう。オールタイムベスト。本邦が誇る最強オルタナティブ・ロックアルバム。
唯一無二。初めての感覚。ベストオブ和ロック。

都会の孤独感、性欲などを織り交ぜた抽象的な歌詞。焦燥感と狂気溢れ、ボーカルをかき消すような極極(キワキワと読む)のサウンド
全員が代わりの効かないメンバーで構成されているほんとうに特殊な音です。なんつうか唯一無二。だから類似バンドがありそうでない。(フォロワーはいっぱい居るけどナンバガ成分を補給できるかと言うと無理)
わたしのiphoneの画面はずっと田渕ひさ子様と彼女の愛機であるボディが削れたジャズマスターです。ちなみに私の愛機もフェンダージャズマスター
田渕さんの舞台上のカッコよさって何なんでしょうか。
神々しいですよね。集中した女の人の表情っていいよね。
涼しい顔してえげつない音だしてる様がほんとかっこいいぜ。ほんとすげえのよこの人の音は。
ドラムスアヒトイナザワのドラミングはほんと何なんでしょうか。
もう歌ってますよ。アヒトはドラムで歌ってます。あの突っ込んだ感じ。もうようわからないくらいカッコいい。スネアの一発一発が爆撃機です。
ライブの時はシンバルがうるさすぎてやばいです。
このアルバムはドラムがえぐい。デイブ・フリッドマンはなんちゅう音作りをするんや。しびれる残響。
このラスト音源は確実に日本のロックを一歩進めました。具体的に言うと和風サウンドとラップ(念仏)を取り入れた。和太鼓のようなベース(想像できないかもしれないけど#2の「INUZINI」ではマジでそう)
でも注意してほしいのはナンバガはライブバンドであります。
ライブがこそ魅力の一つなのです。
再結成した今、あの狂気的なまでのカッコよさが再現されるかどうかはわかりませんが、若い人たちにも観て欲しいな~というのがおじさんの感想です。
Youtubeで、99年のライジングサンの「透明少女」、2002年のロッキンのライブ(全曲ベストアクト)あたりをためしに視てもらえるといいんじゃないでしょうか。あのイントロ!きらきらしてますよ!
「ロック」という言葉は半ば嘲笑の対象になってるかもしれないけど、それはロックがちょっとダサくなったから。(ちょっとだよ)
ナンバガはロック。それも、ものすごいかっこいいロック。ロックはカッコよくないといけない。
カッコいいというのは、カッコつけるという事ではないのです。

ジャニーズがロック風の曲をやってもロックではないのはそのせい。(偏見)
ロックの難しいのはカッコつけずにカッコよくないといけないことです。


ナンバガはそれができてんの。

ダサカッコイイともわけが違うの。

ほんと文字通り身体がしびれるほどカッコイイの。
肉体的な音出してるわけ。人間が出る音なんすよ。

4人の性格が出てる。ぎらぎらのキワキワ。

ナンバガの音源はほぼ2014年にリマスターされている(ビートルズかよ)のでリマスター買った方がええよ!ライブ盤ついてくるしね!
あとジャケットもこの世のCDの中で一番好きだったり。PCの壁紙に一時期してました。

まあ、なんていうか……リマスター盤出てるからみんな買おうってことやね。

 

NUM-HEAVYMETALLIC 15th Anniversary Edition

NUM-HEAVYMETALLIC 15th Anniversary Edition

  • 発売日: 2014/06/18
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

リアリズム+そこはかとないエロが超盛り盛りで大満足。内容は貧困なのに高級感あふれる工芸品のような映画 是枝裕和:万引き家族

 

この映画すげえわ。
そらパルムドールとるわ……みんながみんな上手すぎるよ。ちゃんと邦画も進化しているのねん。リアリズムってやっぱ振り切った方がいいんだね。
万引きってワードはいわゆるツカミですね。ファーストシーンとしては完璧ですが万引きはこの映画の一部であり、メインは家族の方ですね。
底辺家族の描写を上手くやられると好きになっちゃうんだよねー。しかも全員善人ではないのがよし。そこが他のファンタジー貧乏と一線を画すところ。
さりげなく家族の秘密が暴かれていくテンポが秀逸で飽きさせない。
この家族に対する好意やら庇護欲やら刺激されて、かつちょっとうらやましいななんて思うこともあり。(血がつながってない松岡美憂が転がっている家庭で暮らしたい)
画作りは見事としか言いようがない。というか、これがメインじゃないか?貧困家庭のリアルさがすさまじい。あの庭の木の手入れしてない感じとか、大量の生活雑貨が
めんつゆのキャップが開けっ放しだとか菜箸を人に向けるとか謎の派手なフェルト素材の部屋着とか芸が細かい。
一番ツボなのは人ひとり出られればいいという思想が垣間見える物だらけの玄関。俺はそんな玄関をいくつか見たぞ。
リリー・フランキーが人はいいけど知能やモラルに欠けるなさけない小悪党親父を好演。
安藤サクラもほんとやんちゃと母性とエロさと貧乏くささがちょうどいい配分で素晴らしく魅力的。パート仲間との会話が下世話で名シーン。
「絆」って言って半笑いになってしまうところがなんとも素敵。慣れないキレイごとへの一般市民の気恥ずかしさに対して非常にリアル。泣くシーンは単に映画史に残る奇跡。
松岡美憂があまり画面に登場しないのも印象的。男だから若いねーちゃんが画面に出ると釘付けになっちゃうのはしょうがないので、
あえてバランスを取って少なくする。家族をバランスよく見せる。うまいなーうまいなー
そっか、風俗は俺みたいなクソゴミドブ人間だけではなく、生まれつきハンディキャップを背負った人たちの救いにもなっているのね。プレイ中の優しさは天使。
全世界の風俗嬢に愛を叫ぶよ。いつもありがとう。いま大変だけど、コロナ収束したらめちゃくちゃ通うよ。
冗談抜きにほんとうに風俗ってすばらしい仕事だとおもいます。店員も「さやかさん、お願いします」もリアル。(もちろん闇の部分もあるでしょうが)
樹木希林の一人で晩酌するシーンがかっこいいすね。徐々にみんな集まってきて見えない花火を見上げると。やっぱ柱はおばあちゃんなのね。
気になったのはショタコン歓喜の城桧吏っすね。髪型とかかっこいい。立ち振る舞いや表情が美しい。
この映画が唯一過剰だったのはここか。画を持たせるためにある程度は必要だったんだろうけど、ちょい魅力的過ぎませんかね?「誰も知らない」柳楽優弥といいさぁ……
誰の趣味なんだろーなあーーぁー
とはいえ映画にエロスは必須だとおもっているので良し。松岡美憂も安藤サクラリリー・フランキーもみんなエロくて良い。観れる。
あとリリーと安藤のセックス前のシーンのあとに子供が走るシーンでを入れて喘ぎ声とか息遣いをミスリードさせるのは わざとか? わざとなんか? わざとならナイスですね。
よれよれのタンクトップは男女問わず正義か。
しっかしきれいに二時間で収めたわ。見事。
とにかくいい映画でした。ただ劇場でみたいかと言うと微妙。ブルーレイ買うか。

 

 

万引き家族

万引き家族

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勇気出してこの作品がもつ「雰囲気」について信者が語ろう 押井守:「スカイ・クロラ」

わたしはこの映画の雰囲気が大好きである。超好き。好き好き大好き。

映画における「雰囲気」。いい加減なことばだけどそれが正しい。
ネットに永遠に残るから宇多丸の批評能力の限界を示し続ける映画。宇多丸とは結構波長が合うんだけど。
この映画ではまったく一致しない。個人的にこの映画をどう語るかで映画評論家の試金石となっているかも。
この映画を批判するのは、エンターテイメント大好き人間であることが多い。そして人類の95%がそうだとおもう(もっと多いかも)。押井守が初めてマーケティングを意識した映画の癖に、「エイリアン2」とか「マッドマックス」が好きな評論家たちは、この映画を退屈と断ずる。
退屈なのは当たり前だよ。退屈で何がわりいんだよ。
押井守の映画だぞ。宮崎駿じゃないのよ。
そして私は押井守が映画監督の中で一番好きである。信者で原理主義者。(ただ「ガルムウォーズ」は死ぬほど嫌いです。ほめるところの無い駄作。あらゆるコントロールが失敗しているとおもう)
音楽が醸し出す。キャラクタ(森博嗣並感)の表情。メインビジュアル。テーマ。画面の情報量。エトセトラ。
巷で言われているのはこの若者のどんづまり感とアパシーを的確に表しているということ。
まず押井守は「これは私が初めて若者に対して何か伝えたくて作った作品である。」と言いましたが嘘だね。あるいは自己欺瞞だ。そういう監督になりたい、という願望でしかない。
今までは自己満足の為のオナニー映画だったが今度は違うみたいなことを言ったが嘘。笑っていいとも!に出てタモリと薄っぺらな会話だって俺は出来るんだぜ、ってアピールしても無駄。バレてるよ。あなたはそういう大人になれない。
これはマーケティング的なサービス。あるいはこうしたい、とスタートして失敗した。
この人は自分の思想(理屈、論文、嗜好)しか書けない。プロに徹することができない作家なのです。
最近は三池崇史に興味がある、なんて言ってるけど無いものねだりだから。「天たま」とか作っちゃうあんたには無理だから。
ウェルメイドな作品を量産する映画監督になりたくてもなれない。いくら憧れても無理。
もともとがオタク気質なんだから。我々のような同種のキモい奴らにしか理解されないのがそんなにつらいか。辛いよな。キャメロンとかルーカスに認められたのにまだ足りんのか。
押井守は、理屈が常人には理解できないほど質と量ともに豊富なめんどくさいオタクで、人間にも若者にも興味が無く、嘘つきで、頑固なクソオヤジ監督。
いいから黙って自分そのものの表現をしてください。後輩の庵野はちゃんと開き直ってるぞ。自分は子供のままだって。宮崎駿とも生きてるうちにもっと喧嘩して。面白すぎるから。
って結局それしかできないんだけど。ヤンキーに憧れる高学歴男子をジジイになってもやるんじゃないよ。
そしてここで描かれる恋愛は限りなく大人(中年)っぽいこと。見た目が子供なだけ。自暴自棄気味な恋愛の仕方。それを周囲の家具やドアを大きくしたりタバコを吸わせまくってまで強調した「子供」というアンバランスなルック。
セリフの端々に現れる諦念、希死憂慮。
そのどれもがいちいちわたしに刺さるんだけど、雰囲気はもっと別のところにあるような気がしてならない。
アニメーションの芝居のクオリティの高さ。能面のような無表情の癖にこの映画で人物の手は良く動く。本当に手が良く動く。手なんてマンガ家でも描きたくないのに、アニメでがっつりやってる。たばこを吸う時の仕草の細やかさ。たばこを吸う人間を見たことが無い人はあまりいないだろうから、その仕草は過去の経験を呼び起こす。画面がしっとりと生っぽくなる。
メインテーマと共に流れる日常。そのワンカットワンカットが美しい。積み重ねが美しい。
大好きだ。所謂押井守的な「ダレ場」もあるのだが、大好きなシーンだ。
その後に日常は最も繊細なキャラクタ(森博嗣並感)である三ツ矢によってにわかに崩壊し始める。
なんというかすべてのバランスが神業の映画だとおもう。さすがアニメーションの臨界点を明らかに超えた「イノセンス」の後の作品だ。コントロールが行き届いている。(同監督の実写は全く行き届いておらず、偶然撮れたものを楽しんでいる)
この作品には宮崎アニメの様なわかりやすい「動の凄み」は感じられないが、ディテールのすさまじさが総合的な「静の凄み」を醸し出している。一級品の芸術だ。途方もない感性と労力がつぎ込まれている。ゴージャスだ。美しい。
この映画わたしには刺さったよ押井守。これ以上ない程に刺さった。ミームを受け取った。後戻り不能な傷をつけられた。同じ路線で彼が映画を作ることはもう無いのだろうか。
となればフォロワーがいることを祈る。人頼みはあまりにも情けないので、そして自分も力不足ながら彼のようになりたいと祈る。
「いつも通る道だって、景色は同じじゃない。それだけじゃ、いけないのか」

 I kill my father. 

草薙水素を救ったカンナミは男。
女を守り、システムに敗北するのが男。生きてシステムを少しずつ変えていくのが女。いいねぇ。
最後にカンナミはメンヘラ女二人救って自分は死ぬという男の中の男。こうありたいものです。
自分は体調が良かったり、天気が良かったりするとこの映画を観がち。無意識が選んでしまう映画だ。もっとこういう映画に出会いたい。そのために生きてるようなもん。

 

 

スカイ・クロラ The Sky Crawlers

スカイ・クロラ The Sky Crawlers

  • 発売日: 2014/08/13
  • メディア: Prime Video
 

 

快楽から不快へ真っ逆さま いつにもまして画面が真っ赤なドラッグムービー ギャスパー・ノエ:「クライマックス」

高校生の時「カノン」を観てからずーっと好きだった監督ギャスパーノエ。
あらゆるモラルに喧嘩を売る監督ギャスパーノエ。
どす黒い赤が何とも不穏なギャスパーノエ。
DVD買っても観る気分になかなかなれないギャスパーノエ。(「アレックス」とか買ってもいつ観るのよ)
エンターザボイドあたりからちょっと忘れてた監督だけどここへ来てキャリアハイ!最高傑作だぜぇえええええ!
ずっと好きだったんだぜ。

相変わらず鬼畜だな。

ほんと好きだったんだぜ。

短編は全部観てないけど

 

やっぱ天才だったんだね。信じてたよ。これに関してははやくブルーレイ欲しい。ずっと流していたい。
ベストフェイバリットムービーに文句なしに入りました。ギャスパーノエの決定版「クライマックス」!
劇場で観ました。超最高です。なにが最高ってまず短い。97分。これ以上だと体調おかしくしてたとおもう。
冒頭の22名複雑に入り混じるダンスシーンだけでまずこの映画が傑作だと分かります。ツカミとしてはこの映画は大成功なんじゃないすかねー!
これはアニメでもCGでも無理。実写じゃなければ無理な複雑な動きを大人数見せてくれるのが贅沢な気がします。画が動くという快楽は映画の基本ですね。アニメがどうひっくり返ったって獲得できない身体性がここにある。
曲はcerroneの「supernature」のインスト。知りませんでした。が、これシンプルながらくっそカッコいい!この映画の顔になってるのはビジュアルだけではなくギャスパーノエが選んだ音楽です。ダフトパンクエイフェックス・ツインしかわからなかったけどかっこいいよー!
音楽映画が最近増えてきましたが、これが今年の決定打な気がします。演出からテーマを超えて映画音楽がそのものって感じ。めちゃめちゃクール。
22名のダンサー+αのキャラが出てくるので、誰かひとりは必ず気に入るのでは。王子様系のイケメンは居ないので若い女子には若干厳しいか?ひとり今バルサで若干浮いてるグリーズマンに似たイケメンがいるけどこいつの性欲がえげつなくて笑える。後半は女性的には不快な描写だらけだしね。絶対にデートムービーではない。僕は下ネタしか言わない黒人男性二人組が好きでした。芸人の深夜ラジオみたいな会話が最高。
今までのギャスパー・ノエ作品と明らかに違うのは序盤に快楽があること。おもいっきり上げておもいっきり落とす構造にしたことです。わたしのような快楽原則に忠実なエンタメ凡愚に優しい。
ダンスグループの合宿ということでロケ地はどっかの学校らしいです。ともあれ建物の構造はいまいちよくわからん。けど人間とカメラがとにかく良く動くので
視覚的な刺激には困りません。むしろ過多。疲れる。音楽はほぼ鳴りっぱなしで、意味のある会話は中盤以降ほぼありません笑 音楽と叫び声ばっか。
ラリッてる人のいろいろなパターンを観れるのも特徴。おかしな人のパターンが大量に欲しいときはぜひこれをカタログ代わりに。
犯人は誰なのか?というセンタークエスチョンがどうでもよくなるほど気持ちよくて気持ち悪い映像が続きます。
気持ち悪い不快な映像がダメって人はいるとおもいます。この映画はちょっとすごいですよ。実写映画と言うフォーマットじゃないと出来ない。
大衆映画がキャラクタービジネスの一部になりつつある今、こういうのがあるだけでもうれしいなー!
なにが言いたいってアルコール含めたドラッグはこわいよってはなし。それをこんなかっこよく、気持ち悪く撮るとはね。脱帽です。今の時代にベストマッチムービー。
なぜならガラパゴスディストピアと化しつつある現代日本ほど、無意識的にドラッグが求められている時代は無いとおもいますから。
今はアイドルとかスポーツとか萌え市場とかホリエモン西野落合系とかいろいろ種類あるから気になってないけど。
ヒロポンが政府に認められていた経緯を鑑みても、日本人は楽しむというよりは労働の苦痛を紛らわす用途にドラッグを使いがち。(コカの実と一緒だね)ブラックな労働には酒がつきもの。
無職は酒飲まないよね。ストレスオールフリーだから。
もっと広義に考えれば安価(or無料)のドラッグとしてyoutubesnsストロングゼロが若者の主流となっているのかも。(恋愛や車はコスト面で選択肢から外れる)
チープドラッグこそ近現代のビジネスモデルなのでは。
あらゆるドラッグ的なものに今、NOと言おう!その後には地獄が待っているんやで。。。そんなことを、ギャスパーは言いたかったんじゃないかな。。。
真面目で羽目をはずした経験のない人にとってはこの映画ダメかも。

後悔する朝が多かった人向け。

 

 

Climax [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: Lionsgate
  • 発売日: 2019/05/28
  • メディア: Blu-ray