第4阿呆特急

一人旅をします。

香川県放浪③ 理想の讃岐うどんの発見

また朝起きる。香川県滞在三日目。

今日は16時の飛行機で帰らなければならない。

琴平はまあまあ気に入っている。名残も惜しいが金も惜しくもある、ので帰りたくもある。



ふわっととら丸旅館を10時に出る。気に入っていたのでやや切ない。素泊まり7500円は経験が少ないので相場がわからんが、高くも安くもないというのが妥当か。


精算したのちに、ちょっとした会話を女将さんとした。

今後の琴平でのイベントごとを教えてもらう。

ただ、金銭的に余裕が無いので当分来れはしない…

しょせん行きずりの客である。

 

近くの某うどん屋でしょうゆうどんを朝飯に食う。

なるほど。観光地の飯って感じである。

 

私は観光地の飯に若干偏見がある。

おいしくない、高い、ガワだけ立派。そんなイメージだ。

私が狙っているのはそこではなく、地元民が通うような店に旅行では行きたいのだ。
というか私はケチだ。せっかくの休みだから今日は豪勢に行こう、みたいな発想がない。ハレもケも無いすべてが日常の範囲内の男である。

 

ということで、平岡精肉店である。

200円くらいの牛肉コロッケを買う。重い荷物を背負いつつ歩きながら食う。

これが異常なほど美味い。
あまり肉屋のコロッケを食べたことはないが、平岡精肉店の牛肉コロッケはクリームコロッケかと間違うほどに中身のジャガイモがトロっとしている。牛肉もおそらく入っているのだが、正直分からんくらいとろけていて、とにかくうまい。

この商店街にうまいコロッケはあるぞ 右サイドに平岡精肉店の看板



正直琴平にあるもので1番美味い。讃岐うどんよりうまいよこれ。
東京でも多分食えるショコラホイップを更新できたのでよかった。

 

さて。飛行機まで時間がある。

 

私はこの旅行で神保町の名店「丸香」以上の讃岐うどんを求めていた。

しかし最終日まで見つからず、このブログ上でもお茶を濁して、いろいろなうどんに出会えてよかった!などと政治家のように誤魔化そうとしていたのだ。

 

しかし最終日の土壇場、晴れてうどん人生のベスト更新である。
これを願って香川まで来たのだ。

 

店名はうどん一福。

※東京神田にある「香川一福」とは関係ないので注意

 

端岡駅が最寄りで、高松からは近く比較的行きやすい。

今回は琴平駅から向かったが、うどんマニアは高松におりたら一目散にこの店に行くべきだと思う。

いい予感がする

 

もう最寄り駅で降りた時点でいい予感がする。

こういうのはわかるものだ。

一福 外観


20分くらい歩くと着く。常人はレンタカー借りていくといいと思う。

 

まあまあの込み具合。家族連れ等の地元民がほとんど。客層もいい感じ。

少なくとも観光客狙いではない。

 

冷かけ1.5玉、とり天を頼む。

もういい感じの雰囲気で好みなのが直観でわかる。

セルフうどんなのだが、東京のセルフうどんとはわけが違う。

まず厨房に居る人たちが多いし、店のレイアウトや回転率を上げるための動線作りなど、工夫と歴史が詰まっている店だ。

おでんもあるのか



ここに来るために来たのか、俺は…きっとそうだ。絶対そうだ!

探していた店に最終日に滑り込んだ。

ひやかけ1.5玉 とり天



美味い!これこれ!

出汁の色がほぼ透明で、味がついているのか不安になったが、杞憂。

出汁の旨味がものすごい。

いりこの味が塩味に頼っていない、出汁がそのまんま使われている感じ。

そうか、醤油とかに全く頼ってないから色が薄いのだ。出汁自体に色はないんだ。

恐ろしいことに、出汁のあまりの上手さにガブガブと飲んだ際、鼻に磯の香りが抜けた。それほどまでの出汁とは。

とにかくこの出汁は私にとって衝撃で、飲んだ瞬間あまりの美味さに挙動不審となり、周囲を見渡してしまうほど。

うどんもツルツルよりかはざらっとした不揃いの食感で弾力もありうまい。

これも出汁を良く絡めて口に入ってくれる。口当たりも複雑で、つるっと、というより気持ちよく引っかかってくれる感じ。

 

私の狭い好みに合ううどんを見つけられてよかった。これは恋やで。

 

これはまたいずれ、という気持ちで店を出た。今度は腹を空かせてこよう。

もちろんコロッケを更新して一位だ。

昨日読んだアカギの最後が流れを呼び込んだのだろうか。それとも金比羅さんの加護か。

 

高松に着き、最後の目的地、喫茶店皇帝へ。

こちらもだいぶ好み。

皇帝内観

皇帝のチーズケーキ

帰りの飛行機。

隣の人が、フランス語でおそらく「ムハンマドの一生」という本を読んでいる。ヒジャブをつけた美人だが、なぜ高松から成田まで移動しているのだろうか。

それはわからないが、とにかくくそマジメに上空3000メートルで宗教の開祖の人生に思いを馳せている。とにかく熱心だ。

一方私は、つい先ほどまで詣でていた金毘羅が、神道なのか仏教なのか、なにがご本尊でどんなご利益があるのか、なんもわかっていないままヘラヘラ自分勝手な願かけをしていた無職の中年である。

ここに日本人のいい加減さというか、切実さのかけらもない阿呆の一生と敬虔なイスラム信者の差を垣間見た。

ともあれ、生きていくしかないのだ。一福のうどんのような傑作を生涯にものすことができたら儲けものである。


しゅらしゅしゅしゅ。