尾見怜:五〇九号分室

小説・映画・音楽の感想

受信してくれる一部の人への愛を歌うアウトサイダー エリオをかまってちゃん:Os-宇宙人

 


ほら不安定 バイトできない 会話できない 空見上げる
サボり学生 パジャマ着てる 夏休みが 来ずに中退

愛してくれるかなと 狂ったりしてみると みんなが叫ぶなかでぱちくり見ているあなたが居たから

 

 


名曲だと思う。歌詞も演奏もすごくいい。
人間関係絶望的なマイノリティが、ほのかな希望を歌った文字通り電波ラブソング。2011年のアニメ「電波女と青春男」のOPである。

神聖かまってちゃん、の子の指導だと思うのだが、わざと調子はずれにすることで醸し出すチューニングがあってない(周囲と周波数があっていない)感。
この傾向はの子ボーカルバージョンの方が激しい。
自分の表現は大幅に常識から外れているけど、これをいいと認めてくれる「そんなあなたのことが好き」という切実な思いに満ち溢れている。
切実ゆえに異常なほど激しく、それがキンキンしたボーカルとキーボードやゴリゴリのギターの音圧につながっている。
巷にあふれている「等身大の共感できるラブソング」とは真逆の、誰にも理解されない一切苦厄の中に一つ救いを見つけた狂喜の歌である。
「大島宇宙人」とあだ名をつけられていたらしい、の子の私小説みたいな雰囲気の歌詞である。

理解されない苦しみというものは、おじさんになればさすがに慣れるが、ごくたまに若い人を殺す。
「恋愛ばかりでなく、すべての物の考え方が誰とも一致しなかった」といったのは江戸川乱歩だったか。

根底に社会から排除されざるを得ないアウトサイダーの悲しみがあり、その中でごくごく少数の認めてくれる人に会えた嬉しさ、
こんな感情が日本のアニメ文化が世界に誇るピーキー電波ソング的曲調と萌え声ボーカル+音圧ばっちりなロックとの融合で表現されたことが奇跡的。
ポップスがマジョリティ向けなら、かまってちゃんのロックはごく少数の好事家に届きゃよしとばかりに送られた曲なのかも。


しつこくて申し訳ないが、一番よいところはとにかく歌詞。
この歌詞の主人公はデフォルトで避けられてる人。自分を避けないでいてくれた、というだけで大好きになってしまう哀しさ。
まるでボロボロの野良猫にちょっとエサをあげたら急になついてくるときのよう。
想像してしまうとけなげというか哀れというか。

そこに集団の中で疎外された記憶を持つ人たちは共感する。(もちろん私も)イベントでぼっちだとちょっと話しかけられただけでめっちゃ喜んでしまうんだよなぁ。

このネット社会には誰にも受信されない発信がいくつもある。いつか誰か受信してほしいなぁ、とのんきな釣り人のようにほのかな期待を込めて待っている。
仕掛けや餌に工夫する才能も気力もない。皆に愛されるために方向転換したり自分を繕うことが絶望的にできない。たぶん死ぬまで無理だろうな、と半ばあきらめながら。
才能も金もコミュ力もない男はその気持ちを知っている。女性に拒否され続けると学習性無気力状態になるからだ。男性に理解のある彼女ちゃんは絶対に現れない。
だからこそこの歌詞は響く。愛されるのが当然の人が生涯知りえない感情だ。

自分もこんな弱小ブログをやっているのもあり、読んでくれるだけでうれしい。
この曲のように、「あなたを愛してる」というのはさすがに重たくてキモい(記号化された美少女絵だから許容できるのであってリアルな肉体を持つおじさんの愛は要らんだろう)とおもうので、素直に受信してくれてありがとうと伝えたい。読んでくれてありがとうございます。きっとあなたしか受信できないんです。

 

 

Os-宇宙人

Os-宇宙人

  • King Records
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それ本気で言ってんのか? と疑問に思った不穏な女児向けアニメのOP 岡崎律子:夢見る愛天使

 


夢がいっぱい フリルいっぱい
お願いよ ウェディング・ドレス 
ママのように素敵な恋 見つかるかしら

 

 

 

私は小学生だったが、セーラームーンの後に始まった「愛天使ウエディングピーチ」のOP、この歌詞に疑問を持った。一緒に見ていた姉はセーラームーンではないから文句を言っていたような気がする。
ほんとに女子はこれ素敵だと思ってんのか?

みんながみんなウェディングドレスを着たいと思っていてあこがれている、のが暗黙の了解なのだろうか?



要は恋愛脳的なキッチュなものが苦手で、今もゼクシィのCMとか苦手である。下品なエロは笑えるので好物だが、
エロでも耽美系とかナルシズム入ってくるとちょっときつい。
自分に酔っている人が苦手なんだと思う。冷めている人は好き。

結婚式というイベント自体ミスキャストだらけの茶番劇としか思えないのだが、
本当に女性たちはあれがいいものだと考えているのだろうか。
あれが幸せの象徴なら私は幸せになりたくないと思うのだが…

仮にこの曲の歌詞が皮肉だとするとうなずける。
まちがいなく曲調が不穏なのだ。半音ずつ下がっていく不穏な短調

その曲調がカッコいいと感じた。少なくとも能天気なポップスではない。

元ネタは間違いなく「夢見るシャンソン人形」である。(さらに元ネタはベートーベンのピアノソナタ1番第4楽章)

60年代フレンチポップを丸パクリしたものだと思うのだが、一見無邪気だが15歳でフェラチオを想起させる歌詞の歌を歌わせられるなど、元ネタはフリルいっぱいではなく悪意いっぱいである。
この曲は相当趣味が悪い。
フランスギャルという名前からしてひどいが、この女の子をプロデュースしたのは、セルジュ・ゲンズブールという危ない匂いしかしないおっさん。
おばさんなのに脱ぎまくるでおなじみのフランス製寺島しのぶシャルロット・ゲンズブールの親父です。
悪名高い秋元康つんくの元ネタみたいなもん。
生身の女性を「人形」として歌わせるのがまたねぇ。
私はアイドルと言う存在に関しては、こういった自覚的な露悪性があると思っている。
未成年者に対する性的搾取、記号化、見世物、キッチュさ、ポピュラリティ、未熟を売りにする邪悪さ。自己顕示欲の醜さ。
そこらへんを書いたのが今敏の名作「パーフェクトブルー」だと思う。

ウエディングドレスを着た女性を我々は「人間」としてみているのか?

それとも「お人形」として見ているのか。
ダッチワイフの名前の通り、人形相手に性行為をするのはヨーロッパの方が進んでる。カナダやロシアでも人形風俗が人気っぽいけど。
なぜ人はまぬけな見世物になりたがるのか、というのは承認欲求とはどこか別の「ハレ」と「ケ」とか祝祭とかそういうことなんかもしれん。
恋愛→結婚というフリルをつけられた幻想(洗脳)に対する気持ち悪さみたいなものを当時の私は感じ取った。たぶん狙ってると思うのだがなぁ。
まあただそれだけの話である。この曲はそういった不穏さが感じられていまだに好きですねぇ。

基本的にウェディングドレスが似合う女性などごく一部で、いっくら記号を付与したって見た目気持ち悪い人間がこの世を占めていることは間違いない。
だからこそ面白いのである。正直スタイルの悪い女性が着ていると似合ってなくて笑える。

そもそもがひと昔前の女児アニメソングに関するブログを、私はよれよれのグレーのスウェットを着て書いているのである。その悲惨さ、滑稽さがわかるか。
これがディストピアなのか、真の自由なのか、判別できるはずがないのだ。しなくてよい。

ちなみに私はこのアニメを一話も観たことがない。正直オープニングしか興味がなかったという…

 

 

 

ゆるゆる常温系ガールズバンド 押しつけがましくないこれがいいんだよ感 Hinds:i don't run

上昇志向なんかダサい、洗練などクソくらえ、アバンギャルドでさえないローファイ。超等身大のスペイン産ガールズバンドHinds。
私はこのバンドが人気が出る世界がうれしい。別にメンバーが超美形というわけではないのでルッキズムの文脈からも外れるのがややこしくなくていい。
いわゆるアメリカの資本主義、コマーシャリズム、大衆消費社会バリバリのポップスではない。
もっと洗練から遠いところにある、超個人的、遊びから適当に作って生まれたようなバンドである。当然歌も演奏もうまいわけではない。
変に気取っていないスタンスだけど、等身大で楽しんでいこうみたいなメッセージ性が伝わる伝わる。
サウンドも全くこだわってないだろう。
薬なんて必要ない健康的なナチュラルハイの世界である。日本人にこのポップ感は合うと思うが、加工感バリバリのアイドルバンドではないから大衆受けは微妙だろうか。
田舎の若い娘の元気さとか野暮ったい未熟さをそのまま加工せずパッケージしたような音楽だ。記号化されたAKBその他の有象無象とは一線を画す女性の生々しさを感じる。
おっさんはうらやましい。というか懐かしい。バカな女の子の輝き。同じくバカだった頃の楽しさ。マドンナの物まねして遊んでたらできちゃったみたいな歌。

アルバムの表題からもメッセージからも読み取れる通り、周りの大人が数字と時間に追われてせかせかしているのを馬鹿にしながらずっと同じスタンスで楽しんでいてほしい。
私は彼女たちのような賢くて自然体で嫌味のない人たちが大好きなのだ。こういう若い子たちがいることを確認できただけでもうれしい。
世界中に居るんでしょうが、承認欲求こじらせ民がマジョリティのネットでは希少種だ。
私もまわりにあわせて走りたくない。私は走らない。そう宣言することがどれだけ怖いことか。数字だの効率だのは二度と口にしたくないが、周りに影響されて言ってしまうのが人間である。
そんな時に聴いて彼女たちのスタンスを思い出して、くそマジメになってしまったことを反省する。

 

 

I Don't Run

I Don't Run

  • アーティスト:Hinds
  • Mom & Pop Music
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「やけくそ」という精神状態のおもしろさ Babyshambles : Down in Albion

「もうどうにでもな~れ♪」というAAをご存じでしょうか。

↓です。

もうどうにでもな~れ

   *゚゚・*+。
   |   ゚*。
  。∩∧∧  *
  + (・ω・`) *+゚
  *。ヽ  つ*゚*
  ゙・+。*・゚⊃ +゚
   ☆ ∪  。*゚
   ゙・+。*・゚"

なんかいいですよね。

わたしはこのAAが大好きです。一種のさわやかさをそこに感じませんか。しがらみから解き放たれた自由な精神を感じませんか。

わたしは「やけくそ」「自暴自棄」「開き直り」みたいな精神状態によくなります。
勉強なり仕事なり最初はまじめにやっているのですが、うまくいかないことが続きます。
するとまずそれに臨む態度が、どうでもいいや、みたいな感じに徐々にひねくれていきます。精神もネガティブな方向へふれていきます。
当然結果は出ません。ゴミみたいな成果が残ります。自分が恥ずかしくなり、かろうじて残っていたモチベーションはすべて消えます。
最悪なことに、そんな状態が結構好きだったりするのです。
麻雀でいう、残り千点しかなくなって役満しか狙わなくなるみたいな精神状態です。
負のテンションがアゲアゲになる。
そもそも「やけくそ」という言葉自体好きです。自棄糞て。
「もう知らない!」って女の子に言われるのも好きです。
しずかちゃんとかよく言うイメージですが、まじめな女の子に「もう知らない!」って見捨てられたい。それでいてヘラヘラしていたい。

そんな僕の大好きな「ヤケクソ」が詰まったアルバムが、「down in albion」です。
ていうか、#2の「fuck forever」です。マジで自暴自棄な曲です。


I sever my ties
Because I'm so clever
But clever ain't wise
And fuck forever
If you don't mind
Oh, fuck forever
If you don't mind, don't mind, I don't mind, I don't mind

俺は縁を切るよ
頭がいいからね
でも賢くはないよ
そして永遠にくたばりやがれ
お前が構わないなら
永遠にくたばれ
お前が構わないなら俺もかまわないよ
構わない、構わないよ

(適当な訳です)


ドンマイ連呼のこの曲をUKロック一番の名曲だと思ってます。割とマジで。ロックという音楽ジャンルは本質的に「憂さ晴らし」だとおもっているので(向井秀徳並感)。
時々酒飲んでコードだけギターでかき鳴らして下手な歌をうたいます。

すべて嫌になってネガティブなことを叫びまくる。人に嫌われる要素満載。そんな振る舞いができる。それこそが自由だと思いませんか。
ちょっと癇癪をおこして嫁をシバいてしまった。それで離婚だ賠償だとなってしまう世の中です。
電車の中、疲れていて頭がバグっている。ふと無意識的に目の前にあった女のケツを触ってしまった。当然捕まる。人生が終了する。いやだ。
わたしはどうしても、この世界が息苦しい。いっそ殺せ。いや殺さなくていい。むちゃくちゃにしてやれ。大人げなく駄々をこねて暴れまわろうよ。
そういうマインドの時頼れる音楽があるというのはなんだかんだ幸せです。

コーラスの「ah~~~~」というのがなんだか「あ~あ、やってらんねぇ」みたいな嘆息に聞こえます。
ベイビーシャンブルズは当時ライブでもほぼ失敗のような演奏ばかりしています。泥酔、下手すりゃ薬でキマっちゃってる状態だからです。
↓ぎりっぎりで成立してるのがすごい。

あとぶりっ子すぎてちょい腹立つ。


babyshambles - fuck forever (live on jools holland)

先生に怒られたとき。仕事が全くうまくいかないとき。

どうしようもない事態が起きて、自分に対処する能力が全くないor権限がないとき。
「うううん!」とか意味不明な言説とともに癇癪を起す子が小学生の時に同じクラスにいましたね。
そういう人ってなんか人間味があって好きです。現実と理想の乖離を認めない姿勢。弱いからこそパンク。

そんな人間でありたいですね。(うそ、ありたくない)

 

ダウン・イン・アルビオン

ダウン・イン・アルビオン

 

 

虚無な音楽の気持ちよさ 力が抜けていくよぉ  ゆらゆら帝国:空洞です

 

バンドゆらゆら帝国の完成であり大傑作。

ゆらゆら帝国はこのアルバムを最後に解散しました。

なぜ解散したのかというと、「バンドが完全に出来上がってしまった」から。

坂本慎太郎って本当にかっこいいアーティストですね。

この人ばっかりは天才ですよ。

誰もかなわない。

 

チームが完成してしまうという瞬間ってなかなか見れません。

サッカーだったらペップバルセロナとかかな?

レアですよレア。なかなか無い。

そもそもバンドなりアイドルなり、未完成な部分も魅力だったりするわけで、

いつまでも出来上がらないのを売りにしている面もあるわけです。

(僕はこういう商法は資本主義丸出しで嫌いです)

 

ともあれ、ゆらゆら帝国というバンドはこのアルバムで完成をみた。

完成した結果が「空洞です」なんですよ。

 

歌詞には「ない」というワードがよく出てきます。

ただ、曲調がネガティブな感じがしない。

とがったとこがなくて、ふわふわしている。

「ない」ことに若干の肯定的なイメージを与えている。

 

近年断捨離がちょい流行ったりとか、加熱しすぎ感のあるSNSを冷笑するスタンスの人が増えたりとか、コロナでリモートをやらざるを得ない企業が増えて、一部のワーカホリックが依存から脱却したりとか。

なんかちょっと日本の空気の流れが変わりましたよね。

個人的には歓迎です。だって恋愛にしても仕事にしても酒にしても買い物にしてもアイドルにしてもみんながみんな依存症になっちゃって異常だったもんね。

このアルバムはそんな日本社会に2007年の時点でもたらされた甘露であって、

みんなこんな音楽を聴きながらゆったりと虚無をみつめて死んでいこうよ、という救い主なのです。

 


#11「学校へ行ってきます」まったく覇気のない第一声が笑えます。

どんどん死が近づいていくような感じがします。

だけど不吉な感じは無い。穏やかでなんらの問題ない感じ。

 

#2「できない」マジで好きです。

 

 

空洞です 

空洞です 

 

 

お金の匂いのしない音楽ってステキ big thief:U.F.O.F.

とにかくアルバム表題曲に一目ぼれして買いました。リピートで聴き続けてますよ!
私はこのサブスク全盛の時代にCDを買う。CDの生産止まるまで買う。
マンガはkindleなんだけどね。CDってガジェット自体が好きなんだろうね。レコードみたいに高くなっていいから滅びないでほしい。

ミッドサマーでよそ者殺してそうなビジュアルの4人がUSインディー・フォークの雄、Big thiefです。
なんだかアメリカのバンドなのにヨーロッパっぽいね。北の方の感じ。

UFOFの意味は、UFOのFriend、異星の友、って感じらしい。
戸川純かよ。
結構歌詞は電波系でめちゃ内省的な歌詞書く。
内省繋がりか知らんがBig thiefをyoutubeで聴いてると、おすすめにトム・ヨークのキモい顔が出てきます。Googleやめてくれ。

トラッドだけど凝ったフォークサウンドにたくさんの声色と髪型のパターンを持ったボーカルが特徴。
UFOFのアルペジオを弾いてみたけどなんか変なコード展開だよ。

ちょっとこのギタボはめっけもんですよ。ジャニスジョプリンかってくらいのスターにじゃないすかね。

 

下の動画ではエイドリアンちゃんがデス声出せることが発覚。超絶エモーショナルで好き。


Big Thief - “Not” (Live from The Bunker Studios)


もはやジャンルなんて無い。人間ロックしたい時もあるという事です。ちなみにこの曲はUFOFのアルバムに入ってないので注意です。
あとスタジオがすてき。
あとベースの髪がドラクエ6のバーバラに似てる。

これから大注目のバンドですね!

 

 

U.F.O.F. [輸入盤CD] (4AD0129CD)

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ポップカルチャーが通奏低音である世代が作り出した ぼくたちのバンド革命 相対性理論:シフォン主義

物心ついた時、夕方にはアニメが当たり前に放送していて、時々ジブリやディズニーなんか観つつ、任天堂のゲームに時間の大半を費やしていた。
ジャンプではワンピースとハンターハンターがしのぎを削り、とても勉強などしていられる場合じゃなかった。
ゆとり教育に甘やかされつつ、大人たちの古い価値観を華麗にかわしながら、退廃的で快楽主義で、それでいてハイレベルな娯楽を浴びてきた。
そんな子供時代を送ると、こういう音楽が響いたりするのだ。
2006年結成のバンド、「相対性理論」は90年代の申し子である。(なんかライナーノーツみたいで恥ずかしくなってきた)

このアルバムは彼らのファーストミニアルバムで、タワレコのインディーズチャートで1位を獲得したらしいですね。
自主製作らしい。一発目でこのクオリティですか。
邦楽ロックのなかで、エリート中のエリートであるといえる。高校野球で言えば藤浪とか。
そんなにがすごかったのか。
まずベースでありリーダーでありメインの作詞作曲者である真部脩一。
ゼロ年代風のサブカル+ネット+ゆとり文化を意識しダジャレを駆使した歌詞。バンド名からわかる通り理系丸出し。
ほんでボーカルのやくしまるえつこの存在。
現在はウィスパーボイスを前面に押し出して萌え萌えなボイスでおじさんたちを挑発する楽曲が多くなったが、
このアルバムではなにしても無感動なガキみたいに世間を突っぱねたような歌声である。何にも感情がのっていない。
私にとっては、相対性理論というバンドは真部脩一の曲+やくしまるえつこの声。それに尽きる。
最大の特徴がここ。
自分たちの一つ上の世代が敬愛する尾崎豊長渕剛、あるいはメタルバンドなどが、異文化としてしか感じられない私。(満33歳の1987年生まれ)
このバンドはえげつないくらい響いた。我々の世代の音楽はこれである。
TSUTAYAで借りてきた大学生の私は#1「スマトラ警備隊」のイントロのギターで「あ、これはいいな」と直観的におもった。多分一生忘れない経験なのであります。
同じ価値観の人間を見つけた感じがした。
#2「LOVEずっきゅん」のアウトロのベースは一度弾いてみたい。たのしそう。


相対性理論『LOVEずっきゅん』


日常系アニメを文字通り日常的に見て慣れてしまった我々にとってはこの声と詞はポカリスエットのごとく浸透する。
真部さんが抜ける前の相対性理論はいいよ。おすすめ。

話はかわりますが、当たり前だけども現代文化のポピュラリティというのはネット登場からものすごいスピードで質と量が変化するようになった。
現代のポピュラリティに私はジェネレーションギャップを感じている。
今のメインストリームは多分Youtuberだ。他にはなろう系ライトノベルスマホゲーなどなど。質の高低を別にして多様化し、量も爆発的に増えた。
私はその変化に置いて行かれたと自認している。
ポピュラリティから置いてかれてるおじさんだ。
ダサい。そんなのやだ。たのしくない。
ではポピュラリティに対するカウンターとしてタコツボにひきこもった冷笑系オタクか、批判ばっかりの偽エリート左翼になるのか。
でもそれもイヤだ。死ぬほどダサい。
結果、自分のスキだった90年代末~2010年代初めくらいの文化をループして摂取しつつ自慰するしかないのだ。老害に見えないよう細心の注意をはらいつつ。
悲しい。でも私にはそれしかない。

でもあたらしいコンテンツの魅力が分からなくなっても、くらいついていきたい気持ちもあるんだよなぁ。

 

 

シフォン主義

シフォン主義

  • アーティスト:相対性理論
  • 発売日: 2008/05/08
  • メディア: CD
 

 

本邦最強変態バンドの集大成 NUMBER GIRL:NUM-HEAVYMETALLIC

 

2019年に再結成!ほんとうれしいうれしいうれしいうれしいよー 今ライブ観に行けないけど…
わたくしが一番好きなバンドの一番好きなアルバム。たぶん一生変わらないでしょう。オールタイムベスト。本邦が誇る最強オルタナティブ・ロックアルバム。
唯一無二。初めての感覚。ベストオブ和ロック。

都会の孤独感、性欲などを織り交ぜた抽象的な歌詞。焦燥感と狂気溢れ、ボーカルをかき消すような極極(キワキワと読む)のサウンド
全員が代わりの効かないメンバーで構成されているほんとうに特殊な音です。なんつうか唯一無二。だから類似バンドがありそうでない。(フォロワーはいっぱい居るけどナンバガ成分を補給できるかと言うと無理)
わたしのiphoneの画面はずっと田渕ひさ子様と彼女の愛機であるボディが削れたジャズマスターです。ちなみに私の愛機もフェンダージャズマスター
田渕さんの舞台上のカッコよさって何なんでしょうか。
神々しいですよね。集中した女の人の表情っていいよね。
涼しい顔してえげつない音だしてる様がほんとかっこいいぜ。ほんとすげえのよこの人の音は。
ドラムスアヒトイナザワのドラミングはほんと何なんでしょうか。
もう歌ってますよ。アヒトはドラムで歌ってます。あの突っ込んだ感じ。もうようわからないくらいカッコいい。スネアの一発一発が爆撃機です。
ライブの時はシンバルがうるさすぎてやばいです。
このアルバムはドラムがえぐい。デイブ・フリッドマンはなんちゅう音作りをするんや。しびれる残響。
このラスト音源は確実に日本のロックを一歩進めました。具体的に言うと和風サウンドとラップ(念仏)を取り入れた。和太鼓のようなベース(想像できないかもしれないけど#2の「INUZINI」ではマジでそう)
でも注意してほしいのはナンバガはライブバンドであります。
ライブがこそ魅力の一つなのです。
再結成した今、あの狂気的なまでのカッコよさが再現されるかどうかはわかりませんが、若い人たちにも観て欲しいな~というのがおじさんの感想です。
Youtubeで、99年のライジングサンの「透明少女」、2002年のロッキンのライブ(全曲ベストアクト)あたりをためしに視てもらえるといいんじゃないでしょうか。あのイントロ!きらきらしてますよ!
「ロック」という言葉は半ば嘲笑の対象になってるかもしれないけど、それはロックがちょっとダサくなったから。(ちょっとだよ)
ナンバガはロック。それも、ものすごいかっこいいロック。ロックはカッコよくないといけない。
カッコいいというのは、カッコつけるという事ではないのです。

ジャニーズがロック風の曲をやってもロックではないのはそのせい。(偏見)
ロックの難しいのはカッコつけずにカッコよくないといけないことです。


ナンバガはそれができてんの。

ダサカッコイイともわけが違うの。

ほんと文字通り身体がしびれるほどカッコイイの。
肉体的な音出してるわけ。人間が出る音なんすよ。

4人の性格が出てる。ぎらぎらのキワキワ。

ナンバガの音源はほぼ2014年にリマスターされている(ビートルズかよ)のでリマスター買った方がええよ!ライブ盤ついてくるしね!
あとジャケットもこの世のCDの中で一番好きだったり。PCの壁紙に一時期してました。

まあ、なんていうか……リマスター盤出てるからみんな買おうってことやね。

 

NUM-HEAVYMETALLIC 15th Anniversary Edition

NUM-HEAVYMETALLIC 15th Anniversary Edition

  • 発売日: 2014/06/18
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

ミニマルなのはいいことだ もっと日本に来てください The XX:xx

 

ポスト・ポップ、インディー・ポップ、ポスト・ロック、どれが正しいのかわからないけど、The XXは本当にいいバンドです。
音楽のジャンル分けってようわからん。

雑誌の編集者が勝手に決めている気がしてならない。

編成が独特で、ツインボーカルの男女がそれぞれギターとベースを担当。あとはDJによるリズムマシン(リズムボックス?)を使ったビート。
最低限の音数で作られた、星新一の短編のような味わいのアルバムでござんす。一曲一曲も短め。

当然のことながらシンプルです。ボーカルが強いかと問われれば、二人ともささやくように歌います。
ギターもベースも変なことをせず、ギターは基本リフのみで単音。

主にへんなことをしているのは、リズムマシンです。
これを聴いて合う人はぜひアルバムを買ってほしい。

 


The XX Intro long version]

 

最小限の音で気持ちのいいことができるんですねぇ。日本では人気出ないタイプなのかなぁ……
いまや訳の分からない世界に行ってしまったRadioheadColdplayよりよっぽどわかりやすくていいとおもうのですが。
確かにルックスは微妙ですよ。地味だし暗いよ。
でもこのアルバムの#1~4の上位打線はほんと凄いんだよー!
ちゃんとアルバム単位で聞けば最高なんだよー!

ミニマリストブームだしThe XXブーム来い!

自分はコーラスを男女のオクターブユニゾンでやるのがどうにも好きらしい。他にはスーパーカーとか。

 

 

xx  [輸入盤CD](YT031CD)

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自分でも不思議なくらい惹かれて驚いてます カービィ世代は直撃不可避 ヒゲドライバー:スパッと! スパイ&スパイス

近年まれにみるアニソンの傑作。なんでやねんと思うかもしれないけど、個人的に衝撃だったのよ。
アニソンだからとあなどるなかれ。強者はいつも君の狭い世界の外側に居るのだ。
もってけ!セーラー服」よりもまとまってて好きなんよ。CD買ってしまったよ。
BPMは、かなりはやめ。

なぜだか新谷良子の名曲「ハリケーンミキサー」を思い出しました。


まずは何といっても歌詞が秀逸。内容ではなく、声優の歌声を楽器として扱うための歌詞。

スパっパッパラッパーの部分、ド頭で「スッ」というクローズハイハットみたいな詰まった音が1拍目の直前に入ることによって前ノリが生まれている。
各小節の始まりが「ス」なので、発音する関係上誰が歌ってもそうなるのだが、予想だけどこれは歌っている声優に意識するよう指示しているのではないかな。
偶然の産物とは思えない。「パ」はもちろん金管。スパイの曲だから「ス」と「パ」かぁ。よくできてらぁ。

そして金管とベース。よく動くなぁ。「もってけ!セーラー服」でもベースの楽しさに感動したけど、この曲も気持ちがいい。
これは完全に妄想ですが、ヒゲドライバーのバックグラウンドには星のカービィシリーズの音楽を手掛けた石川さんの影響が感じられる。
特に似ているのは「メタナイトの逆襲」の甲板ステージかな?
とにかく私は作曲した多分同世代くらいであろうヒゲドライバーさん、今後に期待してます。ノリのいい曲をどんどんだしてアニソンをもっとおもしろくしてほしいです。

アニメーションもなかなか30代に響く感じで非常によろしい。007オマージュとか。
ニコニコ出身のクリエイター増えたなあ。

 

すいません、アニメ本編は未視聴です。OPばっか聴いてます。なんでやねん。

 

 


TVアニメ【RELEASE THE SPYCE】OP映像「スパッと!スパイ&スパイス」

 

 

唯一無二のメンヘラヒップホップ:Portishead:Dummy

ヒップホップが秘める多様性に唖然とする大傑作。

スーパーダウナー系。寝る前に是非。

わたしのヒップホップにもつステレオタイプは、黒人のガタイのいいにーちゃんがエロいねーちゃんはべらして、キャップかぶってだぼだぼの服着て、
金ぴかのネックレスつけて、すげぇ自己主張を垂れ流しているイメージ。
違いますよ、ことPortisHeadに関しては!初聴きのときはたまげましたよ。

地味な恰好をした今にも自殺しそうな白人美女ベス・ギボンズが、か細いファルセットで過度に暗い歌詞を紡ぎます。ヒップホップなんだけどね。
本作は「スパイ映画のサントラ」というコンセプトだそうで、そんな感じはします。とはいえ全編暗い。暗い。絶望的に暗い。
聴くと音楽の用途が限られているんだけど、内向、内省的な人はおしなべてハマると思います。

個人的にいちばんよかったのは#8「Roads」ですかね。歌ものとして素晴らしい。色っぽいよ。
一般的には#2「Sour Times」(タランティーノが使いそう)#11「Glory Box」(ギターかっこいい) が名曲とされてる感じでしょうか。

アルバムの全体的なイメージとしては、メンヘラの美女が雨の中で泣きながら夜のロンドンをふらふら歩いている感じでしょうか。徐々にテンポが遅くなっていくのも死を匂わせてて不吉。
そんな世界観に引きずり込まれるようなサウンド
音の数はかなりミニマルで、またそこらへんも好みなんだよなー。似てるアルバムが見つからなくて個人的に替えが無いアルバムです。一生聴くと思います。
トリップホップ」というジャンルが示す通り、通しで聴いていると下向きのベクトルでトリップできますよ。退廃的な雰囲気がなんともよござんす。

あとジャケットがこわい。こんなアルバムを作るイギリスと言う国がこわい。これが売れるのもこわい。


Portishead - Roads


髪ボサボサで未亡人みたいな色気。

日本の自称メンヘラ女子はこれを聴いて気分高めて欲しい。

 

 

dummy

dummy

 

 

 

 

倦怠と退廃の匂いが無いリゾートなんてナンセンス METRONOMY:The English Riviera

METRONOMYだったらこれでしょう。前作の「Nights Out」も悪くはないけども。近似アーティストとしてゆらゆら帝国か。

とにかくアンニュイなアルバムですが、リズムはばっちりのれます。それもドラムとベースが安定している為。スカスカでもいい、気持ちが良ければ。
今までこのバンドは打ちこみメインだったのがこのアルバムからベースとドラムが人力になりました。ルックスも死ぬほど冴えなかったのに、伊達男と美女が入ってかなりリア充よりに。
やっぱり生音だと雰囲気変わりますね。ファルセットのコーラスが目立つバンドなので、低音域がしっかりしていると曲としての推進力が違ってくる。
変わり種バンドだったのが魅力そのままに安定したという感じでしょうか。オタク臭い鍵盤の凝り方は前作よりひかえめか。印象的なリフを繰り返すパターンが多いですね。
とはいえ歌ものが多いので聴きやすい。加入したドラマーのアンナ・プリオールがまただるい感じで歌うのでそれもまたよし。

どんな時に聴くかというと、私は別にハレでもケでもない精神が無風状態の時に聴きます。テンポが速いわけでも遅いわけでもないので。
イメージはジャケットからも想像できますが、さびれたヨーロッパあたりのリゾート。カリフォルニアのガワだけをパクりましたみたいな。熱海でも最悪可。

全曲いいんだけど、まあ一番いいのは#7「THE BAY」でしょうか。気持ちいいベースリフですね。オクターブ奏法はこのへんなバンドに合う。
歌詞もなかなか抽象的で魅力たっぷりです。2014のサマソニでも聴いたことがあるのですが、ベーシストのベンガ・アデレカンが良すぎてビビりました。
ベーシストの理想は黒人に確定。踊ってるついでに弾いてるみたいでした。日本人共よ俺を見ろ!って感じ。白人やアジア人じゃ無理だな……あのリズム感はすごい。逸材。
また東京にきてくださいよ……

 

 

 

Because this isn’t Paris
ここはパリじゃないし
And this isn’t London
ロンドンでもないよ
And it’s not Berlin
ベルリンではないし
And it’s not Hong Kong Not Tokyo
香港でもない 東京でもない
If you want to go
君がどこかに行きたくても
I’ll take you back one day
いずれあなたを連れ戻す
It feels so good in the bay
それはとてもいい入り江
It feels so good in the bay
とても気持ちいい入り江

 

 

ほんと怪しくていいっすね!要は人でごった返している大都市ではないということでしょうね。イメージはイギリスの南東海岸だそうですが。
バカンスで一度来てしまったら、その魅力には抗えないって感じかえ。行ってみたい。
この歌詞はすごく好きです。どこか世にも奇妙な物語を連想させる。あるいはSF。またはホラー?

ホテルとカジノとビーチがあって人が少ないって最高ですよね。観光地には行きたくないのにホテルに泊まりたいジレンマを私はどうすればいいのか。
南仏あたりか?だれかおすすめのさびれたリゾート教えてください。これ聴きながらボケっとしたいのよ。

 

 

THE ENGLISH RIVIERA

THE ENGLISH RIVIERA

 

 

 

日本的婉曲表現の行方とヒロインと  植松伸夫:Eyes on me(ファイナルファンタジーⅧ)

 

FINAL FANTASY VIII Original Soundtrack

FINAL FANTASY VIII Original Soundtrack

 

 

FF8はゲームの文脈で語るとかなり厳しい。
ジャンクションとドローだし、レベル上げ意味ないし。システム的に斬新すぎて慣れるまで時間がかかるのだ。クソゲーという印象を持ってしまうのもしかたなし。
ただ、ゲームにおける演出という意味でいうと歴史を変えた。
生歌と生オーケストラをゲーム本編にしっかりと導入したのである。なぜ英語の歌詞なのかというと、正直何言っているかわからないから。単純に聞き流せるから。
あくまでBGMとして使われる。ちゃんと聞いてもほんといい曲なのだけれどね。

 

 

Shall I be the one for you
私がなってもいいかしら?
Who pinches you softly but sure
あなたをやさしくつねる人に
If frown is shown then
だって 痛みに顔をしかめることになれば
I will know that you are no dreamer
これは夢じゃないってわかるから

 

 

近年のJ-POPで、恋愛の歌詞は直接的な表現が目立つ。西野カナ的なマーケティングに基づいた共感を狙っていく作詞法だ。
共感を数値化できるSNSが実現した世界だといっていい。ぶっちゃけた話、自己主張が激しくて胃もたれする、というのが本音だ。
古今和歌集以来の感情の機微を表現する細やかな表現は死滅したのでしょうか?本気で気になります。

Eyes on meはその逆を行っている。
その歌詞が、好きだ、愛してる、永遠に幸せにする、みたいな粗製濫造の直球歌詞ではなく、とにかく婉曲的で大人な表現なのが素晴らしい。かわいらしい。
この曲のすごいところは伝統的な日本的な婉曲表現、それを英詞のラブソングでやった。これに尽きる。(愛の6度を使ったロマンチックな旋律とかアジアンテイストのイントロとかいろいろあるけど)
名詞と動詞が先立つ欧米の表現とは違う文化圏の人間が、英語で作詞すると、これほどまでに響くのか、ということ。
Shall I ~?はネイティブ的にはあんま使わないらしい。遠まわしすぎて。でも、当時中学生だった私はこの言い回しにこそしびれた。激烈な上品さを感じた。フェイウォンの声も相まって。
映画「Shall we ダンス?」でもラストで草刈民代がディズニーのキャスト張りに「Let's dance!」ってハイテンションで誘ったら台無しです。
ちょっと気取った感じで「シャルウィダンス?(踊っていただけますか?)」これがいいのよ!!!
役所広司がはにかみながら返答、「シャルウィダンス(もちろん)」これがいいのよ!!!幸福感半端ないシーンです。
英語圏の人からみたら訳の分からないやり取りだけども。ロストイントランスレーションの別バージョン。和製英語にちかい。

香港で活動しておりまあまあ英語の発音ができるフェイ・ウォンを抜擢したのが憎い。当時スコールに似た髪型だったGLAYにしなくてよかったよかった。
自己主張が美徳であるメリケンにはこの歌詞の良さはいまいちわからんでしょう。何が言いたいの?ってなるはず。できる限り想いを隠す少女漫画と丸出しのハーレクインロマンスの差。

歌詞の内容をざっくり説明してしまうと、戦地に行ってしまう兵士を、そいつが通っていたバーの歌姫が実は好きだったのよ、と想い歌う曲です。
本編のストーリーとリンクしていて、歌詞の主人公で歌姫であるジュリアはヒロインであるリノアの母ちゃんです。思い人の兵士であるラグナは主人公スコールの父ちゃん。
それぞれ違う人と結婚するのだけれど、その子供同士が恋に落ちるという世代間SF的恋愛。
つまりこの歌詞の悲恋は世代を超えてゲーム内で思いを遂げる。ええやんけ。
ただ、母ちゃんが持っていた謙譲の美徳をまったく受け継がなかった娘リノアは、性格の幼稚さから大半の日本人に死ぬほど嫌われたけど。17歳だからまあリアルなのか。
正直助けに行きたくないけど、スコールが正気失うくらい惚れてしまうので、大半のゲーマーがスコールと自分のギャップに苦しんだ。リノアを助けるモチベーションが沸かないというのはFF8あるある。宇宙を漂うリノアを放置してゲームオーバーになるのはビビったし笑った。リノアのモデルを初恋の人にしたという野村哲也のキモイ怨念を感じる。こういう作り手の意志がわかると面白い。
繰り返すが、絶対に母ちゃんのジュリアのほうが大人でいい女です。この記事はそれだけ言っておきたい。
そこらへんの良さはFF10でユウナが多少受け継ぐが、大人っぽい要素は消え去り、ひたすら健気な童貞狙いの萌えアニメキャラみたいなキャラメイク。
でもエンディングの演説は作り手の正直な本音が感じられて好きよ。
そしてFF10-2でキャラ崩壊。なにしてんねん。

何が言いたいかというと。感情を隠して控えめで遠回しな愛情表現をしてくる大和撫子はかわいい。ギャーギャーうるさいメスガキは宇宙に放流されて死にやがれ、ということ。

余談だが、私がタイのバンコクにあるしょぼいカフェでクソ甘いアイスコーヒーを飲んでいるとき、フェイ・ウォン中島みゆきの「ルージュ」のカバーした曲がながれてきた。
ベトナムで大ヒットしたという。
中島の曲もフェイウォンの声も、どこかアジア人に訴えるような独特の情緒があるのだな、としみじみおもった。

なんかおっさん臭い記事だな。

でも我慢して読んでいただけるかしら?

あなたの人生にはモルヒネ的なものが必要か My Bloody Valentine:Loveless

浮遊して、朦朧として、やらなければいけないこともせず、どちらかといえばネガティブな気分なんだけど不思議に心地よく、二度寝したときにみるシュールな夢のなかのようで、いつまでもとぎれずおわらないぼんやりした感覚。

 

このアルバムは用途が決まってしまっている。

いってしまえばトリップに似た状態になりたいとき。

我々は日々外部からの情報に感情を振り回され、疲れ果てている。情報量をシャットアウトし脳内のキャッシュを整理するためにねむる。ただ、そのようなルーティーンをあえて破り、夜更かししてアルコールを摂取し、酩酊しながらこのアルバムを聞いて、亡霊の声のようなギターにからだを浸せば、おのずから情報との嵐から解放され、アッパー系ではなく、かといってダウナー系でもない、雑音の中から聞こえる美しい旋律に身も心も任せ、そこには論理も義務もない甘美で落ち着いた感情のみの世界に浸れる。

 

このアルバムがピンと来なかった、という友人がいたが、彼の人生の中にはこの音楽は必要ないだろうな、と納得したことがある。

彼は現実的で妥協的で幻想を必要とせず、しっかりとした足取りで人生を歩むひとだった。彼からすればわたしは空中でふわふわしている感覚のみの馬鹿にみえただろう。

だけどなぜか気が合った。正反対の性格だったからだろう。

 

正直この音楽の魅力を説明するのは難しい。アルコールの酩酊とはすこしちがう気もする。だけれどわたしの人生には確実に必要で、明確な理由もわからないまま、ずっと聞き続けるのだろう。

 

本作のハイライトは際立って幻想的な#4「To Here Knows When」から亡霊のうめき声のようなギターに爽やかなフレーズが乗っかる#5「When You Sleep」の流れ。

曲をバラバラに聴くのではなく、あくまでもアルバムとして聴きましょう。

 

 

 

LOVELESS

LOVELESS

 

 

 

〇創作の非論理性

 

創作活動全般に言えることなのだが、自分が作ったものをすべて説明できる作者は少ない。ドライブ感を重視して作っている作者はこの傾向が顕著だ。

映画「三つ数えろ」は一級のサスペンス映画なのだが、作中のある殺人の犯人がわからない。わからないまま映画は終わる。

制作中、原作者のチャンドラーにそのことを監督であるホークスが訊ねると、「俺だって知らないよ」という答えが返ってくる。

エヴァ」や「スリー・ビルボード」など、考察すればいくらでもできる物語はたくさんあるが、こじつけと真実の曖昧な境界線を楽しめるようになると、物語はきっとあなたの頭の中にいつまでも残るでしょう。

答えを探してネットを徘徊し続けるなんて、野暮天ってモンです。

「ご都合主義」って言葉は便利だけれども、それを使う人は作品を頭で考え過ぎちゃってるかもね。