尾見怜:五〇九号分室

小説・映画・音楽の感想

ゆるゆる常温系ガールズバンド 押しつけがましくないこれがいいんだよ感 Hinds:i don't run

上昇志向なんかダサい、洗練などクソくらえ、アバンギャルドでさえないローファイ。超等身大のスペイン産ガールズバンドHinds。
私はこのバンドが人気が出る世界がうれしい。別にメンバーが超美形というわけではないのでルッキズムの文脈からも外れるのがややこしくなくていい。
いわゆるアメリカの資本主義、コマーシャリズム、大衆消費社会バリバリのポップスではない。
もっと洗練から遠いところにある、超個人的、遊びから適当に作って生まれたようなバンドである。当然歌も演奏もうまいわけではない。
変に気取っていないスタンスだけど、等身大で楽しんでいこうみたいなメッセージ性が伝わる伝わる。
サウンドも全くこだわってないだろう。
薬なんて必要ない健康的なナチュラルハイの世界である。日本人にこのポップ感は合うと思うが、加工感バリバリのアイドルバンドではないから大衆受けは微妙だろうか。
田舎の若い娘の元気さとか野暮ったい未熟さをそのまま加工せずパッケージしたような音楽だ。記号化されたAKBその他の有象無象とは一線を画す女性の生々しさを感じる。
おっさんはうらやましい。というか懐かしい。バカな女の子の輝き。同じくバカだった頃の楽しさ。マドンナの物まねして遊んでたらできちゃったみたいな歌。

アルバムの表題からもメッセージからも読み取れる通り、周りの大人が数字と時間に追われてせかせかしているのを馬鹿にしながらずっと同じスタンスで楽しんでいてほしい。
私は彼女たちのような賢くて自然体で嫌味のない人たちが大好きなのだ。こういう若い子たちがいることを確認できただけでもうれしい。
世界中に居るんでしょうが、承認欲求こじらせ民がマジョリティのネットでは希少種だ。
私もまわりにあわせて走りたくない。私は走らない。そう宣言することがどれだけ怖いことか。数字だの効率だのは二度と口にしたくないが、周りに影響されて言ってしまうのが人間である。
そんな時に聴いて彼女たちのスタンスを思い出して、くそマジメになってしまったことを反省する。

 

 

I Don't Run

I Don't Run

  • アーティスト:Hinds
  • Mom & Pop Music
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