尾見怜:五〇九号分室

小説・映画・音楽の感想

無関心と労働者階級とカトリック 軽いB級映画に重いテーマをぶち込みまくった快作 トロイ・ダフィー:処刑人

自分が腐女子だったとしたら。
この映画でアンソロとか二次小説とか作りまくってたんじゃないかしら。なんせイケメン双子兄弟モノである。
なにせキャラが濃い。これマンガだよ。大衆向け娯楽である。ハッピーエンドで終わればいいじゃん。
なのになぜ最後こうなった。

ボストンに住む労働者階級の信仰心の強いやんちゃ兄弟の話です。
お兄ちゃん。ワイルドイケメン。相対的に賢く見えるがバカである。必殺技は便器落とし。映画好き。
おとうと。やんちゃイケメン。兄よりもバカである。コミュ強。分断されたアメリカで荷物運んでいそうな顔つき。
ヒロインの立ち位置にはイタリア伊達男系の外見のロッココメディリリーフも務める。作中一のバカである。
ヒロイン枠はもう一人いる。
FBIの凄腕捜査官でヴィランとしての立ち位置のウィレムデフォー。
男ばっかやんけ!
クラシック聴きながら操作するところとスーツの色はまんま「レオン」のスタンスフィールドなプッツンキャラなのだが、
さらにゲイで女装癖持ちという属性が加わって作中で一番濃くて楽しい男になる。この映画の中で俳優の格としては一番上なので、やりたい放題やらせてもらったのかな。
Fワード言いまくりのアイリッシュパブの店主も楽しい。
どちらかというとプーチンに顔が似ててややこしいイタリアンマフィアのボスも表情豊かでたのしい。
脇役もことごとく魅力的なのである。

そんなキャラが濃くて見やすい本作であるが、いかんせんテーマも特濃。
映画におけるラーメン二郎である。まさにB級。バランス感覚という発想そのものが無い。
もしかしたら、名作なのにあんまり有名じゃない理由はこの点にあるのかもしれないな。

そして衝撃のラストからのエンドロール。
あれだけふざけたのに、あれだけ魅力的なキャラを配置したのに、最後ドキュメンタリーみたいになってるwww 
えいやでやってしまったのかな。
メジャー作品ではありえない。これは素人監督じゃないと撮れない。
アメリカ文化はあまり好きではないが、こういう裾野の広さは好きである。
最後のエンドロールで、罪と罰という人類永遠のテーマについて強制的に考えさせられることになる。思いっきりエンタメ作品なのに。結果気持ちよく終われないのである。

「処刑人」というおどろおどろしい邦題のせいか、腐女子にはあまり見つかっていないが、少数の玄人は知っている。さすが。↓
https://womanlife.co.jp/topics/1098166

ちなみに大学時代この映画の影響でTシャツに直で黒のピーコート着てました。恥ずかしい。

 

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