クオリティーの話をすると、各要素めちゃくちゃなので評価不可能というのが正しい。
少なくとも評価が高くなろうはずがない。一部の好きものしか気に入らない映画です。
ただただ素晴らしい。この映画の存在そのものがうれしい。
これを作った人が日本にいる。最高だ。
クドカン成分はバランサーとしてうまく機能している。彼はウェルメイドな大衆向けコメディ作家になってしまったので、いまや三谷幸喜コースに入ったちょっとおもしろいだけのおじさんです。
一度向井秀徳に説教されてほしいな。
本作は原作小説がすでに尋常ならぬ狂気を放っている作品で、コメディの枠を大きく外れたものです。それを映画化するならプロデューサーはどこまでやっていいのかってことを考えなければならない。
石井岳龍を起用した時点で大衆受けを放棄したかと思いきや、クドカンや綾野剛の起用でバランスをとってしまった。少なくともスポンサー向けにとったつもりになった。
それはEDにも顕著で、セックスピストルズと変なJ-POPという大失敗の二本立てになっている。
ただそんな常識的なプロデューサーのコントロールはそこまでで、ディレクションはまっすぐにパンク。内容はしっちゃかめっちゃかです。
監督の石井岳龍は売れる気がない。
正直なアーティストである。
原作の町田康もまっすぐに表現者である。
いまだにわけわからんライブやってる。
二人とも金欲しいなーとか思いながら、結局自分の表現しかできない悲しい人たち。
興行的には爆死なんだろうけど、私はこういうバランスの悪い作品が大好きです。
少なくとも初見だとなにもわからない。
原作組の私は終始ニヤニヤできました。
脚本のクドカンは苦しんだに違いないです。
なんとか笑えるように、一般の感性になんとか修正できるように…あまりにもアナーキーな構造にしすぎないように。
演技がいまいちなのか一部スベりたおしているカットが散見(特に前半)されますが、少なくとも笑える個所はぼちぼちあります。
https://news.1242.com/article/149257
↑の対談にすべてがありますね。
この作品は最終的にカオスに成り果てますが、ラストのラストで話が一気に収束します。
その気持ちよさ。切れ味。
あれだけクソミソだった世界がビシッと締まる瞬間。
「あっけにとられる」経験がそこにはあります。宇宙が砕けますよ。
実はサラリーマンとフリーランスを描いた映画だったりします。パンクとサラリーマンは真逆の性質を持つゆえに相性がいいのです。