尾見怜:五〇九号分室

小説・映画・音楽の感想

なにからなにまでイビツすぎ! バランスを放棄した邦画らしからぬパンク時代劇 石井岳龍:パンク侍切られて候

 

クオリティーの話をすると、各要素めちゃくちゃなので評価不可能というのが正しい。

少なくとも評価が高くなろうはずがない。一部の好きものしか気に入らない映画です。

 

ただただ素晴らしい。この映画の存在そのものがうれしい。

これを作った人が日本にいる。最高だ。

 

クドカン成分はバランサーとしてうまく機能している。彼はウェルメイドな大衆向けコメディ作家になってしまったので、いまや三谷幸喜コースに入ったちょっとおもしろいだけのおじさんです。
一度向井秀徳に説教されてほしいな。


本作は原作小説がすでに尋常ならぬ狂気を放っている作品で、コメディの枠を大きく外れたものです。それを映画化するならプロデューサーはどこまでやっていいのかってことを考えなければならない。
石井岳龍を起用した時点で大衆受けを放棄したかと思いきや、クドカン綾野剛の起用でバランスをとってしまった。少なくともスポンサー向けにとったつもりになった。
それはEDにも顕著で、セックスピストルズと変なJ-POPという大失敗の二本立てになっている。


ただそんな常識的なプロデューサーのコントロールはそこまでで、ディレクションはまっすぐにパンク。内容はしっちゃかめっちゃかです。

監督の石井岳龍は売れる気がない。
正直なアーティストである。
原作の町田康もまっすぐに表現者である。
いまだにわけわからんライブやってる。
二人とも金欲しいなーとか思いながら、結局自分の表現しかできない悲しい人たち。

興行的には爆死なんだろうけど、私はこういうバランスの悪い作品が大好きです。

少なくとも初見だとなにもわからない。

原作組の私は終始ニヤニヤできました。


脚本のクドカンは苦しんだに違いないです。

なんとか笑えるように、一般の感性になんとか修正できるように…あまりにもアナーキーな構造にしすぎないように。

演技がいまいちなのか一部スベりたおしているカットが散見(特に前半)されますが、少なくとも笑える個所はぼちぼちあります。

https://news.1242.com/article/149257

↑の対談にすべてがありますね。

 

この作品は最終的にカオスに成り果てますが、ラストのラストで話が一気に収束します。

その気持ちよさ。切れ味。

あれだけクソミソだった世界がビシッと締まる瞬間。

 

「あっけにとられる」経験がそこにはあります。宇宙が砕けますよ。

 

 

実はサラリーマンとフリーランスを描いた映画だったりします。パンクとサラリーマンは真逆の性質を持つゆえに相性がいいのです。

 

 

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