尾見怜:五〇九号分室

小説・映画・音楽の感想

虚無な音楽の気持ちよさ 力が抜けていくよぉ  ゆらゆら帝国:空洞です

 

バンドゆらゆら帝国の完成であり大傑作。

ゆらゆら帝国はこのアルバムを最後に解散しました。

なぜ解散したのかというと、「バンドが完全に出来上がってしまった」から。

坂本慎太郎って本当にかっこいいアーティストですね。

この人ばっかりは天才ですよ。

誰もかなわない。

 

チームが完成してしまうという瞬間ってなかなか見れません。

サッカーだったらペップバルセロナとかかな?

レアですよレア。なかなか無い。

そもそもバンドなりアイドルなり、未完成な部分も魅力だったりするわけで、

いつまでも出来上がらないのを売りにしている面もあるわけです。

(僕はこういう商法は資本主義丸出しで嫌いです)

 

ともあれ、ゆらゆら帝国というバンドはこのアルバムで完成をみた。

完成した結果が「空洞です」なんですよ。

 

歌詞には「ない」というワードがよく出てきます。

ただ、曲調がネガティブな感じがしない。

とがったとこがなくて、ふわふわしている。

「ない」ことに若干の肯定的なイメージを与えている。

 

近年断捨離がちょい流行ったりとか、加熱しすぎ感のあるSNSを冷笑するスタンスの人が増えたりとか、コロナでリモートをやらざるを得ない企業が増えて、一部のワーカホリックが依存から脱却したりとか。

なんかちょっと日本の空気の流れが変わりましたよね。

個人的には歓迎です。だって恋愛にしても仕事にしても酒にしても買い物にしてもアイドルにしてもみんながみんな依存症になっちゃって異常だったもんね。

このアルバムはそんな日本社会に2007年の時点でもたらされた甘露であって、

みんなこんな音楽を聴きながらゆったりと虚無をみつめて死んでいこうよ、という救い主なのです。

 


#11「学校へ行ってきます」まったく覇気のない第一声が笑えます。

どんどん死が近づいていくような感じがします。

だけど不吉な感じは無い。穏やかでなんらの問題ない感じ。

 

#2「できない」マジで好きです。

 

 

空洞です 

空洞です