尾見怜:五〇九号分室

小説・映画・音楽の感想

狂気の極北アニメ 水島努・おかゆまさき:撲殺天使ドクロちゃん

ぼくこのアニメ一生みていられる!
鹿目まどかの亜種に殺されるのを楽しむためのイカチイアニメーションです。
まったく頭を使わないタイプの作品なのでさらっとdアニメストアで観れるから観てみよう。
10分で作ったような電波ソングの魅力もさることながら、本編も最高。
1話でいきなり流れるBGMが、どう考えてもサティのジムノペディをちょっといじっただけのやつ。何もかも適当で笑える。OVAってユルくていいよなぁ…
開始1分で主人公が殺される。そのままのスピード感でエロとグロギャグが繰り返される。血が噴き出す勢いが消火栓ぶっ壊したみたいで面白い。ちゃんと画で笑わせるタイプのコメディなのです。
基本的にヒロインであるドクロちゃんとのコミュニケーションは成り立たない。
クッソ面白い。クッソ面白いんだ。
そもそもアニメやらラノベというものはこういうものじゃないといけない。
芸術作品ではなく、低俗な消費財でなければならない。
実写や小説ではできない頭の狂った展開をやっていい場所のはず。
なろう系をつまらない、くだらないというのはおかしい。
そもそもくだらないものなのだ。玉石混交の中のいびつな石。
その無意味さがいいのだ!ワンパターンさがいいのだ。

変に質が高いものはいらない!


9割9分萌えとエロとグロと支離滅裂だ。

こういうクオリティとは無縁なアニメは無くならないでほしい。多分心配いらないけど。
原作を最初に受け取った編集者は、読んだときにアレな人なのか才能なのか悩んだそう。
それで、おかゆまさきに電話をかけてみたらちゃんと受け答えができたので、安心して出版を決定したそうな。
それくらい原作は初見だとビビる。恐怖を感じる。"
※近似アニメにごっつええ感じの「きょうふのキョーちゃん」がある。こちらはグロとシュールギャグ特化。
この時の松本人志は誰がどう見ても天才だったので必見。多分ようつべに落ちてる。"

激しく躁鬱的で狂ってるアニメだけど案外ちゃんとストーリーがあったり。
大枠のストーリー展開的には「うる星やつら」である。
明示的にドクロちゃんの読んでる漫画や、OPの歌詞に示されている。
未知の世界の住人が日常に飛び込んでくるというパターン。

主役の桜くんはスケベな男子である。
もうアニメに出てくる男キャラクターは「スケベ」という属性さえあればいいんじゃないか、とおもったり。
そもそも官能小説に出てくる男性キャラはスケベしかいないし。エンタメではスケベじゃない男性を主人公に据えると話を転がすのが非常に難しかったり。
エロが物語の原動力だとスタートダッシュが違うよね。ぜったいに続きみたくなるもんな。Ex.チェンソーマン
優しいとか面白いとか、女性的に魅力的な男性の性格っていうのは極論「スケベ」に集約されると思うんすよ。
んで魅力的では無い性格はタナトス、つまり死の欲動ですから、暴力、やけくそ、ギャンブル、酒乱などなど。
つまり、エロくてカッコよくて躁なキャラは「リビドー」的なキャラ(エンタメ主人公)、無気力でキモくて鬱な「タナトス」的なキャラ(文芸の主人公)に別れるのでは? なんておもいます。
バディ組ませたらエンタメも文芸もどっちもいけるよね。映画の「セブン」とかね。
リビドー的。つまりアメリカ。アメコミ。ヘミングウェイ
タナトス的。つまり日本。碇シンジ西村賢太。どっちが好きって言ったら間違いなく後者なのだが。

ちなみに私はラノベと言うのは官能小説の亜流であると考えている。編集者がタイトルを考えるなど、作り方に近いものがあるし。
官能小説の構造を持ったジュブナイルポルノが生まれて、激しいエロを抜いて大衆化し、ゲームの要素を加えたのがラノベだ。本質は官能小説である。
純文学やエンタメ小説とは根っからちがうのです。
ラノベと混同されやすい萌え四コマは根っこはギャグマンガである。性質が似ていても親が違う。エロとギャグは親和性高いけど。

このドクロちゃんにも根っこにはエロとタナトスがある。これ以上人生に何が必要なのだろうか。(いろいろ必要だろ)

水島努がもっとも笑いにおける間が上手いアニメ監督だと思う。次点で押井守。正直ぶらどらぶは不安だが。

 

撲殺天使ドクロちゃん&2 〈期間限定生産〉 [DVD]