酔っぱらいながら見るのが正解の映画。
もはややけくその幸福感。
脚本としてはオチてないけどこれも映画なのだ。
話にオチがないのを嫌がる人には無理かも。むしろそういう人が見てこういうのもありか、なんて思うのも吉。
興行的という点ではアカデミー賞なんかよりよっぽど優秀なんだ。
だって気分が盛り上がるじゃないか。イケメンいない、美女ちょっとだけ、エロもグロもない、泣かせない、どんでん返しもない、でも音楽がある。
ええじゃないか、の精神です。
この名作にみんな気が付いたほうがいい。
タモリといい、引きの芸の魅力にみんな気が付かなさすぎなんだ。
俺はほんとに幸せだ。こういう映画があって幸せ。
プロットは超簡単。ていうかしょうもない。
アフリカに帰るつもりだった黒人ジャズプレイヤーと幕末で問題を抱えまくった大名が出会う。
普通の映画だったら、そこで問題をジャズの力で解決してハッピーエンド…となるが、この映画はそうではない。
ただただ登場人物全員が現在の諸問題を徹底的に無視して、ジャズを演奏して享楽にふけり続けるのである。
いわゆる起承転結のうち転結をなんぼのもんじゃい、とばかりにぶん投げた。原作と音楽を担当した筒井康隆の仕業だ。
これができるのは純粋にうらやましい。自由さにあこがれて嫉妬さえする。なんで我々はこんな楽しくないのだ、と。それはまじめだから。
どうしても人間社会ってまじめである。それが嫌なので、こういう映画いっぱい見たいよ。
自由で、暗い意味やテーマをバカにしていたいい時代のほうがいいじゃん、ということです。
バブル時代の上澄みのいいところ。
しかめつらしく、「人生とは」みたいなこと考えてるやつら、あんたら暗いよ。シオランなんか読んでんじゃないよ。ってことです。
乱痴気騒ぎの異常な興奮、ユーモアと音楽、おもろいからタモリや山下洋輔を出してしまえ、な筒井康隆的なセンス。
なにかと理屈ばかりで堅苦しいアフターコロナの世の中にはこういうものが必要だ。
和琴三人女のエロさ。
対する政治、戦争のつまらなさ。洒落のわからぬエリートに政治は任せて我々はふざけたおそう。そんな無責任ゆえの快楽がここにある。
祝祭的享楽。乱痴気騒ぎ。いってしまえば憂さ晴らし。バカ殿以上のカオスな時代劇コメディ。
向井秀徳や北野武にもおそらく影響を与えた一本。
横に長い城のあほらしさ。洒落のわかる大人のカッコよさ。
最高潮でエンドロールに入る潔さと切れ味。
ちょっとわけわかんないくらい爽快。
コロナで身も心も委縮してしまった我々に、ほんとうに必要な一本。