クオリティ抜群のSFコメディ。
画面レイアウトに関してはヴィルヌーヴと双璧でいい監督。
個人的にはキューブリックの後継者はヴィルヌーヴではなくこの人です。決定的なのは音楽のセンスの有無。(ヴィルヌーヴははやくジマーから離れろ)
映画でいう笑いの質というのは根本的に、日本的なドラマのそれと異なる。
それに気づかず、お笑い芸人が映画を作ったりすると地獄なのだが(松本人志etc
ドラマの笑いはいわゆる日常の中のキャラクター同士の会話がユーモアを生むものであって、漫才に近い。球数が多くて天丼が有効。
翻って映画は、会話の面白さ(タランティーノ
とかウィルスミスとか)で笑いをとるというのは非常にアメリカ的で好きなのだが、あれは特別であって、王道は語らずに見せて笑わせるという事。
語らずに見せろ、は脚本の基礎だが、それができていてかつ笑わせるというのはかなり難しい。多分映画という仕事の中でも最高級の仕事だ。語らずに画の変化や動き、状況で笑わせる。
それができるのって知的。
※タランティーノとか北野武は明らかにおしゃべりを音楽としてみている節がある。庵野秀明は会話を物語を動かすためではなくケレン味のために使っている。押井守はただの論文や古典の引用やパロディ。
逆に泣かせるのは楽。悲しい過去でも背負わせとくかの呼吸。
命がけの婚活、というそれだけで面白いアイディアをさらに一ひねり、ふたひねりしているので、とっつきにくいのですが、わかるとおもしろい、面白すぎる。
脚本が秀逸だと感じたのは、狂った世界観の中でキャラクターの行動全てに納得がいく事。
この映画、説明不足感がギリギリ無いのである。
(既視感ある世界観のくせに納得させる事をサボってるテネットとは真逆)
恋愛の愚かさ、あっけなさ、悲しさを描いているという点ではミラン・クンデラ「存在の耐えられない軽さ」が近いとおもう。ただロブスターの方がポップで悪意がある。クンデラはなんかマジメ。まず恋愛小説と謳っといて1行目がニーチェだし。誰が読むねん。(こじらせたおばさんかな)
魅力的な悪役の系譜について。(日本だとシャアとか)
ダース・ベイダー、ロイ・バッティ、スタンスフィールド、タイラー・ダーデンと来て、次はこの映画の「シングルゲリラのリーダー」(名前がないのがまた、)だ!
レア・セドゥのかわいらしい顔とやってることのギャップは基本として、個人的に字幕の訳者をほめたい。
「よくやったな。優秀だった」みたいな軍人みたいなしゃべり方なんですもの。男勝り女性の上官萌えですよ。死の間際の表情もいい。
ラストも最高。
いわゆる余韻を残す系のラストで、まあ観た人の解釈が割れるとおもう。
その後の主人公の選択はどうしたのか?ってやつ。
ロマンチスト派とリアリスト派。
感想を言い合うのも面白い。(というより、映画というメディアは語られる事抜きだと厳しい)
我々こじらせたおじさんは、良かったねー、面白かったねー、ですまない映画をこそ求めているのだ。