尾見怜:五〇九号分室

小説・映画・音楽の感想

これ以上ないほどにエログロ! タイトルは声に出したくなるよね 野坂昭如:骨餓身峠死人葛

ほねがみとうげほとけかずら。
ほねがみとうげほとけかずら。

骨餓身峠死人葛ですよ。

 

 


骨餓身峠死人葛ですよ!


日本一かっこいいタイトルの小説なんじゃないすかね。
どれだけおぞましいものが書けるかという実験なんじゃないだろうか。すごいよ。
差別アリ、暴力アリ、性描写アリ、これぞエンタメなんじゃないですかね。
この小説は野坂昭如の中編です。
文体はいわゆる野坂文体で、映像的な描写が句点だらけ、読点ぜんぜん無しでやってくるので、いつも読んでいる文の倍以上長い間読み続けるようになり、
なんだか精神的に息が続かないというか、その文体が舞台である戦中の炭鉱を表しているともおもわれ、文中で平気で主語も変わるし、基本酷い事しか起きないので、なんだか読んでいて逆にハイになってくるという代物。(一応まねしてみた)
食料が枯渇つつある九州北部松浦郡あたりの炭鉱という、おどろおどろしい場所のセレクトがまたいいっす。骨我身なんて地名あるんすかね。
表題は、炭鉱で死んだ者の墓から生えてくる白く美しい葛の花。その名も死人葛。こわい。
その葛の実が栄養たっぷりで、戦後の食糧難におけるソリューションと化す。
でも単純にやったー、というわけにはいかない。
この葛、死人を埋めた土からじゃないと生えない、っていうのが悩みなんすよ。
さてどうするってんで、赤んぼ作って殺せばいいじゃん。それ死人じゃん。死人葛生えるじゃん。いいじゃん。という発想になり、
そっからは大乱交&出産&赤ちゃん殺しまくり。徐々に狂っていく人間たちをそれはそれは丹念かつハイスピードで語る。
なんてこと考えるんだ。野坂さん。
主人公は「たかを」というかわいい女の子です。「たかお」じゃなくて「たかを」ね。
この子がさいしょに死人葛に魅入られて狂気を帯び、最終的に炭鉱の人間全員おかしくなっちゃう。
文体はいわゆる野坂昭如の真骨頂。句点でお構いなしに文をつなぎ続けて、疲れたら読点つけるみたいな、黙読してても息切れしてしまいそう。
ずっと「。」がこないから、なんだかそこまでたどりつけないような息苦しさがある。(なんなら読点が無いページもある)
村上龍なんか影響受けてんじゃあないですかね。
てにをはを省くので、なんだかリズムが講談師みたい。それが心地よく癖になる。
この文体はおどろおどろしいところに良く似合う。後半なんか1ページにひとつしか読点がない。
うわーーーーっとえぐい情景描写がダイジェストのごとく次々と襲い来るもんだから、興奮しちゃうよ。
おそるべきドライブ感。
いやーとがった文体ってほんとにいいですね。普通の文が味気なく感じるよ。辛いもの好きみたいで麻痺して際限ないよね。
ラストは犯しまくり殺しまくりで、さらに炭鉱が水に沈みなにもかも終わり。
流される死んだ主人公であるたかをの股には卒塔婆がぶっ刺さっているという狂気のビジュアル。これで終わり。こっわ。最高かよ。
なんだこれ!映像化してぇー!!してよー!