尾見怜:五〇九号分室

小説・映画・音楽の感想

唯一無二のメンヘラヒップホップ:Portishead:Dummy

ヒップホップが秘める多様性に唖然とする大傑作。 スーパーダウナー系。寝る前に是非。 わたしのヒップホップにもつステレオタイプは、黒人のガタイのいいにーちゃんがエロいねーちゃんはべらして、キャップかぶってだぼだぼの服着て、金ぴかのネックレスつ…

ポーカー映画ではフルハウスもっててもオールインしてはいけない シャツの着替えも用意しとこう マーティン・キャンベル:007 カジノ・ロワイヤル

ポーカーとスパイ映画好きとして時々見返したくなる映画。カジノロワイヤルは原作でも第一作なので007のエッセンスが凝縮されてますな。偉大なるマンネリズムといか、まだやってんの?と言われてもしょうがないシリーズなんだけども。もうやることないで…

静のドンパチ映画、主役はもちろん映像、時々デルトロの顔  ドゥニ・ヴィルヌーヴ:ボーダーライン(原題SICARIO)

邦題ダサくするの勘弁してくれ…… この映画はとにかく映像がきれいです。ドゥニ・ヴィルヌーヴは空軍基地をきれいに撮る名人ですね。というか、空軍基地というものがそもそも美しいのかもしれません。抜け感が半端ないので気持ちがいい。 庵野だったりガイリ…

倦怠と退廃の匂いが無いリゾートなんてナンセンス METRONOMY:The English Riviera

METRONOMYだったらこれでしょう。前作の「Nights Out」も悪くはないけども。近似アーティストとしてゆらゆら帝国か。 とにかくアンニュイなアルバムですが、リズムはばっちりのれます。それもドラムとベースが安定している為。スカスカでもいい、気持ちが良…

黒潰れ、群像劇構造、良翻訳、音楽、すべてのピースがはまった大傑作  ガイ・リッチー:ロックストック&トゥースモーキングバレルズ

映画における画面の黒潰れを愛している。常に画面の20%くらいはつぶれていてほしい。そんな黒潰れフェチの変態御用達なのが、フィルム・ノワールの映画群、リドスコ、フィンチャー、そして本作です。単に明るいのがきらい。黒目の色がうすい、とか日光が苦手…

情報量の暴力 大混乱を楽しめる素質を磨け  トマス・ピンチョン:競売ナンバー49の叫び

ピンチョンはね……文学をかじろうとする人間にとっては憧れなんですわ。二十歳なりたてなのに度数高い酒を飲んでみるとか、アマチュア登山家のくせにスポンサー集めてエベレスト挑んじゃうとか。結果は無残です。難解すぎて読めるわけない。似たような作家に…

世界の全体最適の加速と個人 あと唐突な暴言がおもしろかった  上田岳弘:ニムロッド

平成30年下半期芥川賞受賞作品。書店で衝動買いして二日で読みました。いやーよかったですね!最初は上田さんどうしちゃったんだ?っておもっちゃったけどね!芥川賞は純文学の新人賞なのでSF作家はなかなかとれません。近年では円城塔ぐらいかな?好みに合…

愛すべきケレン味、必殺技を叫ぶという事  庵野秀明:トップをねらえ!

おっかない敵があらわれまして、人間が何かしらこまって、誰かしらが、倒す。 というプロットで共有しているのに、アメコミ映画に無くて日本のアニメや特撮だけにあるものはなんでしょ。 それは必殺技の叫びです。 ほんとうに大事なことです。 スパロボをや…

日本的婉曲表現の行方とヒロインと  植松伸夫:Eyes on me(ファイナルファンタジーⅧ)

FINAL FANTASY VIII Original Soundtrack アーティスト: 植松伸夫 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス 発売日: 2014/02/26 メディア: MP3 ダウンロード この商品を含むブログを見る FF8はゲームの文脈で語るとかなり厳しい。ジャンクションとドローだ…

無視されがちな恋愛要素にこそ司馬イズムの真骨頂 司馬遼太郎:燃えよ剣

燃えよ剣(上) (新潮文庫) 作者: 司馬遼太郎 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1972/06/01 メディア: 文庫 購入: 32人 クリック: 409回 この商品を含むブログ (293件) を見る 永遠に消えない新選組ブームの種火であり、沖田総司を天才美青年剣士にしてしま…

映画の文体破壊とバカバカしさへの愛  クエンティン・タランティーノ:パルプ・フィクション

面白い映画だなぁ。なんで面白いんだろう?わかりません。好きなシーンはいっぱいあるんだけどね。そんな人が多いであろう映画。ジブリ作品に近いかもしれません。情報の質があまりにもほかの映画と違うのです。 カップルが強盗して、チンピラ二人が黒人殺し…

生理的嫌悪感をいかにして演出するか?  庵野秀明:劇場版新世紀エヴァンゲリオン Air/まごころを君に

ええーとすでに私の精神構造に深く入り込み忘れたくても忘れられない作品がエヴァです。中学から高校くらいまでずっと心中はエヴァエヴァしてました。最近はいろいろと好きなものも増えて脳の片隅に追いやられていますが。当時は感性がビンビンだもん。こん…

物質主義の終わりとアナーキィ・ワンダーランド  デヴィッド・フィンチャー:ファイト・クラブ

生涯ベスト映画です。まあとにかくテンポ速い。原作のチャック・パラニュークの語り口はいちいちひねくれていて、暴論故に気持ちがいい。生理的なリズムでしょうね。もっと歳食ったら小津安二郎とか好きになるかもしれませんが。今映像のテンポで一番好みな…

あなたの人生にはモルヒネ的なものが必要か My Bloody Valentine:Loveless

浮遊して、朦朧として、やらなければいけないこともせず、どちらかといえばネガティブな気分なんだけど不思議に心地よく、二度寝したときにみるシュールな夢のなかのようで、いつまでもとぎれずおわらないぼんやりした感覚。 このアルバムは用途が決まってし…

罵倒と差別の快楽 村上龍:愛と幻想のファシズム

傑作であり衝撃作です。高校の時に読んで以来ずっと自分の中でベスト小説。次点で町田康の「告白」が続きます。ずっと考え続けなければならないし、わたしの人生について回るハードルというか障害というか。これに触れない限りこのブログは始まりません。私…